2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子による癌遺伝子ID1の発現抑制と癌細胞の不可逆的増殖停止誘導の関係
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22570137
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 利明 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (40263446)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / ID1 / 不可逆的増殖停止 / エピジェネティクス / Skp2 / Myc / シグナル伝達 / 除放剤 |
Research Abstract |
ID1は、正常細胞の分化・老化阻止因子、あるいは乳癌等の原因癌遺伝子と考えられるが、その発現制御機構には不明な点が多い。本研究における、肝癌細胞株HepG2でのHGF依存的なのID1量の減少、および、その後の不可逆的細胞増殖停止への移行の発見を基に、本研究はID1の発現制御機構を明らかにし、HGFにより癌細胞が不可逆的増殖停止に至る機構との関係に手がかりを得ることを目的とする。平成23年度においては、以下4項目について結果を得た。 1.HepG2細胞においてHGF依存的な発現量減少を見出していたプロテアソーム構成因子Skp2が、タンパク質分解の制御とは別に、転写因子Mycの活性を上昇させること、さらに、Skp2の過剰発現がp16Ink4aの遺伝子プロモーターを抑制することを見出した。これらにより、Skp2によるMyc活性の制御が、p16発現抑制を担うID1の発現制御に係わる可能性を得た。 2.HGFによるID1発現量減少において、MEK-ERKの強活性化が「必要条件」となっているが、MEK活性化だけではp16の発現が上昇しなかったことから、MEK-ERKの強活性化は「十分条件ではない」ことが明らかとなった。 3.HGFによるHepG2細胞の不可逆的増殖停止時におけるエビゲノム状態を調べた結果、ゲノムからの転写不活性化に係わるピストンH3K9me3の核内局在が大きく変化することを見出した。 4.培養細胞の結果を個体に展開する基礎として、SCIDマウスにHepG2細胞を移植したところ、再現性良く癌が形成された。形成された癌に対しコラーゲンマトリゲル除放剤(製品名MedGel)によりHGFを投与したが、癌の増殖抑制は見られなかった。この際のマウス血中のHGF濃度から、除放剤からのHGF放出不良が原因であると考えられ、個体における癌へのHGF適用のために新たな投与手法開発が必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度交付申請書に記載の4項目の内、2項目((1)(4))について結論を得ており、1項目((1))は試料調製が完了し解析が進行中、残る1項目は(2)の結果を得て展開する研究内容であることから、おおむね当初の予定通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度の研究においては、マイクロアレイ実験およびChIP on Chip実験といった特別な技術および機器を使用する実験を行う必要があるため、これらを速やかに遂行することを目的として、実験に習熟した外部機関との共同研究を進めている。また、得られた結果からバイオインフォマティクスによる解析を進めるため、H24年度より共同研究者を加えた。
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Research Products
(9 results)