2011 Fiscal Year Annual Research Report
シアル酸を持つ遊離N型糖鎖の代謝におけるオートファジーの役割の解明
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22570148
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
鈴木 匡 独立行政法人理化学研究所, 糖鎖代謝学研究チーム, チームリーダー (90345265)
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Keywords | 遊離糖鎖 / オートファジー / シアル酸 / 糖鎖代謝 / 細胞質 / リソソーム |
Research Abstract |
本年度はオートファジー欠損を誘導出来るm5-7株を用いて、オートファジーの欠損とシアル酸含有糖鎖の量的増減を解析した。その結果(1)オートファジーの欠損が誘導される場合、シアル酸含有糖鎖の量が時間依存的に増加するが、一方で(2)オートファジーのプロセスを欠損させてシアル酸含有糖鎖を蓄積させ、オートファジーを再活性化させても、すでに蓄積した糖鎖は殆ど代謝されない、ということが明らかになった。このことは、オートファジーがシアル酸含有糖鎖の代謝に直接かかわるのではなく、シアル酸含有糖鎖の蓄積を防ぐ分子機構に必須である、という興味深い可能性を示唆している。昨年明らかにしたシアリン(リソソーム膜上のシアル酸輸送体)の関与を考え合わせると、以下の仮説が支持される:(1)シアル酸含有糖鎖はリソソーム由来である。(2)基底状態のオートファジーはシアリンの正常な機能に必須であり、オートファジー欠損下ではシアリンは誤ってシアル酸含有糖鎖を細胞質に放出する。(3)一端細胞質に放出されたシアリル糖鎖は(細胞質シアリダーゼを発現している組織を除き)通常状態では代謝されない。 これらの仮説を更に検証するため、蓄積している遊離糖鎖の細胞分画を行った。その結果、殆どのシアル酸含有糖鎖は細胞質に蓄積していることが明らかとなった。また飢餓誘導におけるオートファジーによってシアル酸含有糖鎖の量がどのように変化をするか検討したところ、この場合は比較的速やかに細胞質のシアル酸含有糖鎖を代謝することが明らかとなった。これらの結果は上記の仮説とも一致し、シアル酸含有糖鎖の代謝とオートファジーの関与の分子機構を明らかにすることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在論文を執筆中であり、シアル酸含有糖鎖の由来と、その代謝におけるオートファジーの役割についてはほぼ解明出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在細胞質に存在する遊離糖鎖について解析をほぼ終了したところであるが、その過程で(1)細胞外に構造上全く別のタイプのシアル酸含有糖鎖が存在し、(2)その糖鎖は血清由来であることが明らかとなった。血清中にシアル酸含有糖鎖が存在する、というのは現在の常識では説明できず、更に新たなシアル酸含有糖鎖の代謝機構の存在を示唆している。今後こちらの解析も行っていく予定である。
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Research Products
(8 results)