2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質合成反応サイクルにおけるリボソームの構造変化メカニズム解析
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22570165
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
石田 恒 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (60360418)
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Keywords | リボソーム / 電子顕微鏡像 / 分子動力学シミュレーション / 伸長因子EFG / tRNA転位 / チェット様運動 |
Research Abstract |
X線結晶解析により高分解能で解かれたリボソームおよびmRNA、tRNA、伸長因子などの因子分子の立体構造を、様々な反応状態のリボソームの電子顕微鏡像に当てはめ、それぞれの状態に対応するリボソーム-因子分子複合体の詳細な立体構造を構築し、反応過程における構造変化メカニズムを原子レベルで明らかにすることを目指す。 本年度は、リボソームおよびタンパク質合成反応に関わる伸長因子EFGタンパク質が結合したX線結晶構造(post-translocational状態)と電子顕微鏡像(pre-translocational状態とtranslocatioal状態)において、分子シミュレーションを用いてpost-translocational状態⇒tranlocational状態→pre-translocational状態へと連続的に立体構造変化をおこし、この反応過程におけるtRNA転位反応遷移状態の構造を大量にサンプリングすることに成功した。これらのサンプリング構造から自由エネルギー変化を解析したところ、tRNA転位反応の自由エネルギー変化にはリボソームのねじれ様運動が重要な役割を果たしていることが示唆された。特に自由エネルギー地形を解析することにより、リボソームのAサイトとPサイトの中間に位置するリボソームタンパク質のループ部分、リボソームのPサイトとEサイトの中間に位置するリボソーム核酸のループ部分が、tRNA転位運動の自由エネルギーに寄与していることが示唆された。これらのループはtRNA転位の際、構造を局所的に大きく変動させていた。このことから、これらのループ部分がtRNA転位運動におけるゲート、開閉の役割を果たしていることと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画にもとづき、リボソームの分子動力学シミュレーションによる、タンパク質合成過程の自由エネルギー変化の一過程を解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、タンパク質合成過程における、リボソームおよび伸長因子EFGの構造変化をより詳細に解析する予定である。そのために、申請者らが開発した生体超分子構造変化解析プログラムDynDom3Dを用いる。以上を実施することにより、タンパク質合成過程におけるtRNA転位ダイナミクスと自由エネルギー変化の対応関係を原子レベルの解像度で理解する。
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