2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22570166
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
油谷 克英 独立行政法人理化学研究所, タンパク質結晶構造解析研究グループ, 上級研究員 (90089889)
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Keywords | 蛋白質の安定性 / 超好熱菌由来蛋白質 / 示差走査熱量計 / 蛋白質変性の熱力学 / 蛋白質の熱変性 / 熱変性の可逆性 / 蛋白質の構造 / CutAl |
Research Abstract |
蛋白質の立体構造がどのような機構で維持されているかを理解することは、蛋白質科学の基本的な重要課題であるので、古くから多くの研究者によって研究されてきた。しかし、それらの蛋白質の変性温度が70-80℃が上限であるため、それ以上の高い温度での安定性の機構は推定でしかなかった。その主な原因は、100℃近くに変性温度を持つ超好熱菌由来蛋白質の熱変性は不可逆で熱力学研究を妨げていたからである。本研究課題では、その不可逆性を克服して「100℃以上の高温での蛋白質変性の熱力学」の確立を目的としている。 大腸菌由来のCutAl(EcCutAlと呼ぶ)はサブユニット内に3個のCysを有するために良好な可逆性が得られないと思われた。そこで、SH基を含まない変異型(C16A/C39A/C79A)を作成(EcCutAl_OSHと呼ぶ)した。更に、これを鋳型とした疎水性変異型SllA、E61V及びをSllV/E61を作成した。EcCutAl_OSHのpH9での変性温度は88℃で、示差走査熱量計(DSC)での1回目のDSCカーブと一度熱変性して冷却した2度目のカーブは完全に重なることを見出した。このことは、この蛋白質の熱変性は可逆的で得られた熱容量は信頼に足るものであることを示している。 更に、EcCutAl_OSHの変異型SllA、E61V及びその二重変異型SllV/E61は、SH基を含むEcCutAlの同種の疎水性変異型と同様に高い熱安定性を獲得した。二重変異型の変性温度は115℃と高いに関わらず、80%以上の熱変性の可逆性を示すことを確認できた。EcCutAl_OSHの置換による構造変化を確認するために結晶化を試み、分解能1.7AでX線結晶構造解析に成功した。本年度の成果は、これまでに困難といわれていた高い温度での熱変性の可逆性を有する試料蛋白質の調製に成功したことと言える。
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