2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22570166
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
油谷 克英 独立行政法人理化学研究所, タンパク質結晶構造解析研究グループ, 上級研究員 (90089889)
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Keywords | 蛋白質の安定性 / 超好熱菌由来蛋白質 / DSC / 蛋白質変性の熱力学 / 蛋白質の熱変性 / 熱変性の可逆性 / 蛋白質の立体構造 / CutA1 |
Research Abstract |
蛋白質の立体構造がどのような機構で維持されているかを理解することは、蛋白質科学の基本的な重要課題であるので、古くから多くの研究者によって研究されてきた。しかし、それらの蛋白質の変性温度が70-80℃が上限であるため、それ以上の高い温度での安定性の機構は推定でしかなかった。その主な原因は、100℃近くに変性温度を持つ超好熱菌由来蛋白質の熱変性は不可逆で熱力学研究を妨げていたからである。しかし、昨年度の報告で述べたように、大腸菌由来CutA1のSH基を含まない変異型と、これを鋳型とした疎水性変異型S11A、E61V及びをS11V/E61が、高い熱変性温度(90-115℃)を維持して、熱変性の高い可逆性を示すことを見出した。今年度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、これらの変異型CutA1の熱変性の熱力学的パラメータを精度高く求めることが主な目的であった。用いたいずれのサンプルも、DSCの昇温速度に依存して、変性温度に変化が見られた。例えば、鋳型の場合、昇温速度に依存して、変性のピーク温度が10℃(82.2-91.4℃)近く変化した。このことは、異なった昇温速度での測定から個々の蛋白質の熱変性の比熱変化(ΔC_Pのを見積もれることを示唆している。pH9での鋳型、S11V、E61V、及びS11V/E61V変異型の変性エンタルピー変化(ΔH)は鋳型の変性温度85.6℃でそれぞれ870、1302、1228及び1582kJ/molであった。更に、この温度での変性のギブスエネルギー変化(ΔG)はそれぞれ0、51.5、43.9及び92.1kr/molであった。以上からこれらの疎水性変異型蛋白質の安定性(ΔGの増大は、ΔHの増加に起因していると熱力学的に言える。このことは、変異型のTΔSが鋳型のTΔSとほぼ近似しているか増大していることから判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DSC測定結果のデータの触れが予想に反して大きかったので、多数のデータポイントを取得することで精度を補った。このような問題点があったが、比較的順調に進展し、これまで国際的に未知の領域であった初期の成果が得られたと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、高温での疎水性相互作用の熱力学的役割を明らかにすることで成果が得られたが、最終年度は静電的相互作用の熱力学的パラメータを得ることが主目的になるが、静電相互作用を付加または削除した変異型の場合、熱変性の良好な可逆性が得られるかどうかが次に打開すべき困難な課題となるであろう。当面はトライアルエラーで色んなケースを試みるしかないと思われる。
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