2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオームとホスホプロテオーム解析を基盤とした細胞核内構造の解明
Project/Area Number |
22570181
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
堀米 恒好 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60053352)
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Keywords | プロテオーム / シグナル伝達 / ホスホプロテオーム / 細胞核 / WDタンパク質 |
Research Abstract |
1.リボソーム小サブユニット(SSU)プロセソームのt-UTPサブコンプレックスの構造形成機構の解析HeLa細胞核マトリックシス画分に見いだされたWDタンパク質であるCIRHIA,UTP15およびWDR43の複合体の構造形成機構を解析し、「核内構造構築モジュール」としての働きを検証した。(1)これらのタンパク質はいずれも核小体に共局在し、in vitroの結合実験で互いに結合したことから、細胞内で複合体を形成していることが示唆された。(2)FRAP解析でいずれも動きが遅かった。(3)アクチノマイシンD処理で脳A合成を阻害して核小体の構造が崩れてもこれらのタンパク質は「キャップ構造」中に共局在し、動きも遅かった。これらの結果はこれらめWDタンパク質が「核内構造構築モジュール」の足場タンパク質として働いているという考えを支持するものであった。 2.SSUプロセソームのUTP-Bサブコンプレックスの構造形成機構解析 HeLa細胞核マトリックシス画分に見いだされたWDタンパク質であるPWP2は、WDモチーフで形成されるプロペラ構造を2つ持つタンパク質でUTP-Bに含まれる。そこでこのWDの働きを調べて次のことを明らかにした。(1)Y2Hスクリーニングで見いだした3種のタンパク質のうち2種はPWP2のC末側のプロペラのみと結合した。(2)結合タンパク質の1つであるFLJ75459がRNA結合モチーフを持つことから、PWP2のRNAへの接近を促しSSUプロセソーム形成を補助する働きが期待された。(3)PWP2は2つのプロペラを持つという構造的特性を利用してUTP-Bのコアとして機能すると予想された。(4)これらの結果もWDタンパク質が「核内構造構築モジュール」の足場タンパク質として働いているという考えを支持するものであった。 3.ホスホプロテオーム解析を進めるために、より簡便に多くのリン酸化ペプチドを同定・定量する方法として、リン酸化ペプチドのチタニアカラムからの3段階溶離法を検討してその系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな目的である、WDタンパク質を含む細胞核内構造である「核内構造構築モジュール」の存在の検証が進み、その存在を支持する結果が、SSUプロセソームのt-UTPとUTP-Bサブコンプレックスで得られてきている。今後、細胞周期に伴うこのモジュールの崩壊の検証を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「核内構造構築モジュール」存在の検証を、核小体以外の核質に存在するWDタンパク質についても進める。そのためのGFP融合タンパク質発現用や、タンパク質断片発現のためのベクターはできている。 2.細胞周期依存的に"核内構造構築モジュール"が崩壊することを示すため、これまで解析してきた主要な核WDタンパク質10種類以上を大腸菌で発現して、細胞周期の間期と分裂期のカエル卵抽出液で処理し、分裂期の抽出液で処理したものはモジュールを形成できなくなることを検証する。 3.この処理でリン酸化されたタンパク質について、リン酸化部位を網羅的に解析する。さらにその主要なリン酸化部位については点突然変異法により、どの部位のリン酸化がモジュール崩壊の原因になっているか確認する。 4.これらの結果を総合して"核内構造構築モジュール"が核内の高次構造形成に寄与していること、また、細胞周期に従ってダイナミックに変化するものであることを示す。 5.これまでの結果をまとめて学会発表を行い、冊子にして公表すると共に、論文として雑誌に投稿する。
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