2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜上におけるPIP3結合蛋白質ドメインの高次構造転移と情報伝達機能の制御
Project/Area Number |
22570191
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
辻 暁 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 准教授 (60227387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木澤 仁 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 准教授 (40192380)
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Keywords | SWAP-70 / PHドメイン / PIP3 / 固体NMR / 分光法 / 脂質二重膜 / 膜結合性蛋白質 / 二次構造 |
Research Abstract |
脂質二重膜表面に結合した際に見いだされるSWAP-70 PHドメインの立体構造変化を、固体NMR分光法等の分光学的手法で観測し、構造変化の詳細を解析した。円偏光二色性(CD)スペクトルは、SWAP-70 PHドメインがPIP_3を介して脂質二重膜ベシクルに結合したときに、αヘリックスから不規則構造への変化を含む二次構造変化を生じることを示した。アラニン(Ala)およびトリプトファン(Trp)残基に^<13>C安定同位体標識を導入し、水中および脂質膜ベシクル結合状態における^<13>NMRスペクトルを比較したところ、SWAP-70 PHドメインのC末端部位に位置するαヘリックス中のAla300およびTrp297は、脂質膜結合時において、水溶液中におけるαヘリックス構造と大きく異なる構造に転移することが見いだされた。Ala300のNMRスペクトルは、転移後の構造が運動性の高い不規則構造であることを示した。蛍光スペクトル測定の結果は、Trp残基の側鎖の一部が膜上において親水環境に露出することを示唆し、NMR分光法で観測されるTrp297の変化およびCDスペクトルで見いだされる二次構造変化と一致した。これらの結果より、脂質二重膜上においてSWAP-70PHドメインは大きな立体構造変化を生じ、C末端部位がαヘリックス構造を失うことが示された。この構造変化は、αヘリックスに含まれる核移行シグナル配列の露出の変化を通して、SWAP-70の細胞内局在の制御に関わると予測される。さらに、構造変化の制御機構を探るために、溶媒中のカチオン組成に対するSWAP-70 PHドメインの脂質膜結合構造の依存性を解析した。SWAP-70 PHドメインの脂質膜上における構造は、Mg^<2+>イオン依存的に変化する事が見いだされ、脂質膜近傍の局所環境が脂質二重膜上におけるSWAP-70の構造制御に関与することが示唆された。
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