2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜上におけるPIP3結合蛋白質ドメインの高次構造転移と情報伝達機能の制御
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22570191
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
辻 暁 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 准教授 (60227387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木澤 仁 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 准教授 (40192380)
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Keywords | 分光法 / シグナル伝達 / 膜表在性蛋白質 / 脂質二重膜 / 生物物理 |
Research Abstract |
本研究の目的である、脂質膜上におけるPIP3結合蛋白質ドメインの構造および構造-機能相関の解析のために、本年度は、以下のような研究を行った。(1)固体および溶液^<13>C NMR、円偏光二色性および蛍光スペクトル測定を用い、脂質膜上におけるSWAP-70PHドメインの立体構造変化を解析した。円偏光二色性測定は、脂質膜表面における構造変化がα-ヘリックスからランダムコイルへの転移を含むことを示し、固体NMR測定により見いだされた局所構造変化の情報とあわせて、脂質膜上においてPHドメインC末端部位のαヘリックスがランダムコイルへ転移することが示された。この構造変化は、PIP2またはPIP3を含む脂質二重膜により誘起されるが、結合基質を含まない脂質二重膜共存下およびPIP3の水溶性アナログであるIP4の結合によっては誘起されない。これらのことは、SWAP-70 PHドメインの脂質膜上における構造の特徴を明らかにするとともに、PIP3結合蛋白質が脂質二重膜上で水溶液中とは異なる二次構造をとることを示す点で重要な意義がある。(2)SWAP-70 PHドメインと相同性の高い一次構造を持つDef6 PHドメインについて、各種の分光法を用いて脂質膜上における立体構造め解析を行った。Def6 PHドメインは、SWAP-70 PHドメインと同様の脂質選択性で脂質二重膜に結合するが、脂質膜上におけるC末端部位のα-ヘリックス-ランダムコイル転移は観測されなかった。SWAP-70では、細胞内の局在に関与する核移行シグナルがPHドメインC末端部位に位置するが、Def6では対応するシグナル配列は存在しない。この点は、ここで見いだされた脂質膜上におけるPHドメインの二次構造変化がシグナル配列の露出を通じて細胞中におけるSWAP-70の局在制御に関与することを示唆しており、生理的に重要な意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的なPIP3結合ドメインであるPHドメインについて、脂質二重膜上における構造変化を分光学的手法により観測する方法を確立し、SWAP-70PHドメインについて脂質二重膜表面において誘起される立体構造変化を明らかにすることができた。また、脂質膜上の構造変化の生理的意義が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにSWAP-70PHドメインについて、PIP3を認識しで脂質膜に結合した際に、二次構造変化を含む立体構造変化が誘起されることが示されたが、構造変化の機構の詳細は明らかになっていない。脂質二重膜結合時にPHドメインの構造変化を誘起するトリガーとして、脂質膜と芳香族側鎖の相互作用が考えられる。芳香族残基の部位特異的変異導入を利用し、脂質膜との相互作用による芳香族側鎖および主鎖の構造変化を分光学的に解析することで、脂質膜上におけるSWAP-70PHドメインの構造変化を誘起し、脂質膜から遠隔の部位に位置するC末端α-ヘリックスの構造転移を生じる機構を解明することを目指す。
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