2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22570201
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 貴史 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 准教授 (50324760)
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Keywords | 小脳 / 神経発生 / 神経回路 / ゼブラフィッシュ |
Research Abstract |
小脳は、円滑な運動の制御や学習に関与する中枢神経である。本研究では、これまでに小脳神経細胞の発生過程と神経回路形成の分子メカニズムを解明するために、ゼブラフィッシュ変異体を作成してきた。本年度は、変異体の詳細な表現型解析と責任遺伝子の同定を試み、さらにその責任分子の機能解析を行った。 Shiomaneki変異体の責任遺伝子として、IV型コラーゲンa6を同定した。IV型コラーゲンa6は、主に皮膚に発現していて、基底膜を形成している。この変異体は、顆粒細胞の軸索である平行線維の走行に異常がみられる。インテグリンa5、ファイブロネクチン変異体においてもShiomanekiと同様に平行線維の異常が見られた。また、これまでに報告されている他のIV型コラーゲンの変異体(dragnet)と同様に、視神経の軸索走行においても異常が観察された。以上のことから、基底膜と神経細胞の相互作用が軸索の適切な走行に関与していることが示唆された。 gazami変異体は、穎粒細胞の形成が著しく阻害される。この変異体は、α,2臆伝子の機能欠損であることを明らかとした。Co27遺伝子は、生後1日目において前方神経系に強く発現しており、核内タンパク質であった。gazami変異体では、小脳を含む前方神経系でアポトーシスを起こす細胞が増加していた。また、この変異体では顆粒細胞前駆細胞の形成は正常であった。これらのことから、cp27遺伝子は、顆粒細胞への分化あるいは増殖過程で重要な役割を果たしていると考えられた。 これらの結果から、これまでに報告のない分子、メカニズムが小脳神経発生と回路形成に関与していることが明らかとなった。今後、これらの変異体の解析を進めることによって小脳神経発生メカニズムに新たな知見が得られると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、小脳変異体の責任遺伝子の同定を終えている。現在、その遺伝子産物の機能解析と変異体の詳細な表現型解析を行い、分子メカニズムの解明を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
変異体の責任遺伝子産物の機能解析を行うとともに、相互作用する遺伝子の同定と機能解析を行う。 shiomaneki変異体の責任遺伝子であるコラーゲンとインテグリン、ファイブロネクチンの神経軸索走行における関係を明らかとする。基底膜の構造解析を行う。gazami変異体ついては、Cp27タンパクの機能が不明であるため、相互作用をする分子を単離することによって遺伝子産物の機能解明を目指す。 これらの変異体の解析から、小脳の神経発生と回路形成の分子メカニズムについて新しい知見を得ることを今後課題とする。
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