2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボルボックス胚の形態形成運動における微小管の挙動の解析
Project/Area Number |
22570203
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
西井 一郎 奈良女子大学, 理学部, 特任准教授 (80392059)
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Keywords | 原腸形成 / 大節形成 / 胚葉形成 / 形態形成運動 / 藻類 |
Research Abstract |
単細胞生物から多細胞生物への進化(多細胞化)は動物・植物をはじめ、ほどんどの真核生物で見られるが、その進化の初期過程は明らかになっていない。ボルボックスおよび近縁種は多細胞化が最近になって起こったグループであり、分化、形態形成、卵生殖に関して段階的な進化が見られる希有なモデルである。なかでも、多細胞で構成されたシートが折り畳まれていく形態形成運動は、多細胞生物の形作りの最も重要な基礎過程の一つであり、私は、ボルボックスの胚発生で起こる形態形成運動をモデルとし、細胞の変形と移動がこの形態形成運動の原動力であることを示してきた。これまでに解析した変異遺伝子の中で注目すべきは、細胞骨格の微小管をレールとするモーター分子キネシンであった。そのため、本研究では、ボルボックスの微小管を可視化し、その局在と挙動を野生型と変異体で解析することを目的とした。 本年度は、昨年度に引き続きGFPなどの蛍光タンパク質によって微小管がライブ観察可能な株の作成を検討した。ボルボックスのゲノムはGC含量が高く、他のモデル生物とはコドンの使用頻度が異なるため、他の種で用いられている遺伝子を発現させることは困難なので、ボルボックスのコドンに最適化するよう改変した。ボルボックスにおいてVenusが観察可能な株をすでに得ており、蛍光タンパク質が十分量発現した場合は、蛍光観察に関して問題がない。蛍光タンパク質遺伝子とtubulin遺伝子との融合遺伝子を作成し、発現を調べた。その際、αtubulin、βtubulinのいずれにするか、蛍光タンパク質を付加する位置、蛍光タンパク質との間に挟むスペーサーなど、考慮すべき点は多い。両tubulinに関して実験を行ったが可視化可能な株は得られておらず、前述のスペーサーに関して改善を加えた遺伝子を作成した。さらに、tubulin以外にも、微小管結合タンパク質に蛍光タンパク質を付加した遺伝子も作成した。また、本年度はボルボックスの近縁種プラチドリナの形態形成運動に関する論文を発表した。
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