2011 Fiscal Year Annual Research Report
ホヤの発生に内在する脊索動物の基本的な発生機構の保存性と可塑性
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22570207
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西駕 秀俊 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60131918)
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Keywords | マボヤ / Hox / クラスター / カタユウレイボヤ / Otx / Pitx / 付着器官 |
Research Abstract |
ホヤのHox遺伝子の解析:カタユウレイボヤのHox遺伝子については、9個のHox遺伝子が二つの染色体に分かれて存在し、クラスター構造は壊れていることを明らかにしてきた(Ikuta et al., PNAS 2004)。このような他に類例をみないカタユウレイボヤのHox遺伝子に関する知見がホヤ間でどの程度保存されているのかについて知るために、ホヤ綱を構成する二つの目のうち、カタユウレイボヤとは異なる壁性目に属するマボヤHox遺伝子のクラスター構造の解析を行っている。今年度は、染色体に対するFISHにより、マボヤでは9個のHox遺伝子が、カタユウレイボヤとは異なって、一つの染色体にあること、しかしHox遺伝子のクラスター構造は壊れていること、それにも関わらずHox遺伝子の染色体上での配置については、2種のホヤ間である程度の共通性がみられることを明らかにした。ホヤが脊椎動物への進化の系譜から分かれた時にHox遺伝子クラスターに起きた変化を理解する糸口が得られたということができ、今後の遺伝子の配置に関する解析が大きな成果を産むことが期待される。 ホヤの発生遺伝子の転写調節機構の解析:ホヤ幼生の付着突起は、アフリカツメガエル幼生のセメント腺と相同な器官であるとされている。マボヤでは、Pitx遺伝子Hr-Pitxが神経胚期から付着突起形成領域で発現する。Hr-Pitxの発現制御機構を調べ、PitxがOtXの下流にあることを示した。セメント腺でもOtXの下流にPitxがあることが分かっており、Pitx-Otxの遺伝子発現カスケードは、ホヤと脊椎動物の付着器官の発生で保存されていることを提唱した。興味深いことに、この遺伝子カスケードはカタユウレイボヤにはなく、ホヤにおける発生プログラムの可塑性の研究に良いパラダイムを提供する重要な成果ということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では次の二つの研究項目を設定している。 研究項目1.ホヤの発生遺伝子の転写調節機構の解明と保存性、可塑性の解析 研究項目2.ホヤのHox遺伝子の構造と機能の解析 2に関しては、当初の目論み通り、あるいはそれ以上の成果が得られていると考えている。1については、Otx,Pitxについては、ほぼ予定通りに進んでいるが、当初計画していたもう一つの遺伝子Lhxについては、研究担当を予定していた博士課程院生が就職したため、中断を余儀なくされた。全体としてみた場合に、評価は(2)となる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1,2共に、このまま進めて、年度末までに論文報告を行う。Hox遺伝子に関してはレビューを執筆・出版を予定する。Lhxに関しては、一応中断とし、その他の計画をできる限り推進し、論文出版を行うことに重点を置く。
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