2011 Fiscal Year Annual Research Report
ライブイメージングによるニワトリ胚中胚葉細胞の遊走機構の解明
Project/Area Number |
22570210
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仲矢 由紀子 独立行政法人理化学研究所, 初期発生研究チーム, 研究員 (70415256)
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Keywords | ニワトリ初期胚 / 中胚葉 / ライブイメージング / 細胞遊走 |
Research Abstract |
本研究は、ニワトリ原腸陥入胚のライブイメージングにより、中胚葉細胞の核とゴルジ器官の動きを画像化、数値化することで細胞の移動の方向性を定量的に理解し、中胚葉遊走を制御する分子シグナルの同定を目指す。本年度は、核とゴルジ器官の座標情報から、両者の相対的な位置関係を調べ、さらに、これらがTGF-βシグナリングに影響されるかどうか検討した。方法としては、pCAGGS-H2B-mcherry-2A-Golgi-YFP発現ベクターをエレクトロポレーション法により中胚葉細胞へ導入して細胞の核とゴルジ体をラベルし、TGF-βシグナリング阻害剤SB431542(25μM)存在下あるいは非存在下でニワトリ胚を6時間培養した。その後、30秒間隔で60分間のライブイメージングを行い、動画撮影された画像の核とゴルジ体を画像解析ソフトMetamorphのtracking pointを使用して追跡し、座標、移動距離等の情報を測定した。その結果、コントロール胚では、中胚葉細胞の移動方向に対してゴルジ体が核の後方に位置していたのに対して、SB431542処理胚では、ゴルジ体が核の側方に位置する細胞が多く観察された。また、SB431542処理胚ではコントロールと比較して、遊走中の細胞の分裂頻度が相対的に高かった。さらに、HH stage 3+で薬剤添加し、その後13時間培養した胚の発生段階を比較した結果SB431542処理胚(n=13)がHH stage 7-8に達していたのに対して、コントロール(n=14)ではHH stage 5に留まる胚が多数見られ、TGFシグナリングと発生進行に何らかの関わりが示唆された。TGF-βシグナリングが、核とゴルジ体の位置関係に影響を持つことが、どのような細胞挙動(移動角度、分裂頻度、移動速度等)にリンクし、発生の進行に関わるのか、次年度に繋がる非常に興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究のエフォートを70%として計画をたてていたが、実際に実験に費やす時間が大幅に少なかったことが達成度に影響した。また、画像取得後の核とゴルジ体の座標化に関して、それぞれの重心定量を同時に自動で行えないものかと時間を費やしたが、成果が得られなかった。結局、マニュアルトラッキングで大まかに相対的位置を確認するだけでもかなりの情報量になり、それに気づくまでに時間を要することになってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の結果を基本として、遊走細胞における核とゴルジ体の位置関係を1つの尺度とし、TGF-βシグナリングのみならず、FGF、BMP、Wntシグナル等の、中胚葉細胞の遊走に対する影響について解析を実施する。さらに別の尺度として、遊走時の細胞における微小管ダイナミクスを観察し、各種シグナル分子の影響について検討を加える。問題点としては、微小管の観察時には100倍の水浸レンズを使用するが、この際にニワトリ胚自体の漂泊があるために微小管の動きを正確に画像化できないことが挙げられる。この点を改善するためにも、観察系そのものの改善が必要なのか、あるいは画像取得後の処理により克服できるものか、現在検討中である。
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