2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊索動物におけるレチノイン酸依存的発生制御機構の進化
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22570214
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
藤原 滋樹 高知大学, 教育研究部・自然科学系, 教授 (40229068)
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Keywords | レチノイン酸 / Hox1 / 進化 / 遺伝子発現制御 / 脊索動物 |
Research Abstract |
(1)カタユウレイボヤの尾芽胚表皮におけるHox1遺伝子の発現がレチノイン酸によって制御されており,それが出水孔原基,および咽頭鰓裂と体壁筋の分化に必須であることを証明し,論文として発表した(論文リストNo.3)。 (2)カタユウレイボヤのHox1遺伝子が神経索で発現するために必要なエンハンサーを第2イントロン中に同定した。重要な領域を数百塩基にまで絞り込み,その内部にレチノイン酸応答エレメント(RARE)を発見した。このRAREにはレチノイン酸受容体が結合すること,この配列に変異を入れるとエンハンサー活性が著しく損なわれた。つまり,ホヤの神経索におけるHox1の発現活性化にもレチノイン酸が重要であることがわかった。 (3)上記のHox1神経索エンハンサーは,レチノイン酸の受容体あるいは合成酵素をノックダウンすることによっても,著しく活性が減少するものの,弱く活性化する。このことは,神経索においてHox1の転写を活性化するレチノイン酸以外の因子の存在を示唆する。私たちは,その候補としてCdxを考えでいる。現在,ドミナントネガティブ型Cdxを発現させて,Hox1レポーター遺伝子の発現が影響をうけるかどうかを調べている。 (4)オタマボヤは,ホヤと近縁であるが,レチノイン酸の合成酵素も受容体ももたない(ゲノム中に遺伝子がない)。しかし,Hox1はホヤとよく似たパターンで発現する。本研究では,オタマボヤの5'上流配列をlacZに連結したレポーター遺伝子をホヤに導入したところ,神経索における発現が見られた。重要なエレメントは数百塩基にまで絞り込めたが,RAREと思われる配列は見られなかった。また,レチノイン酸処理をしてもエンハンサーの異常な活性化は見られなかった。~ホヤとオタマボヤの両方で,レチノイン酸に依存しないHox1エンハンサーが存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hox1の発現制御に関しては,表皮においても神経索においてもレチノイン酸が中心的な役割を損うことを証明できた。また,レチノイン酸がHox1の転写活性化を通じて,出水孔原基や咽頭鯉裂,体壁筋などの形成に必須の役割を演じていることも証明できた。一方,当初計画では,心臓原基の発生におけるレチノイン酸の役割やレチノイン酸合成酵素の発現調節の仕組みについても研究する予定だったがそれについての研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ホヤのHox1の神経索エンハンサーについては,レチノイン酸による転写制御の仕組みはほぼ解明できた。あとは,レチノイン酸以外の因子が何であるかを同定して,論文発表をする。レチノイン酸合成酵素の転写調節の仕組みも,現在レポーター遺伝子を用いて解析中であり,これを論文にまとめる。また,オタマボヤHox1の,ホヤ胚におけるレポーター解析については,重要なエンハンサーエレメントを数百塩基に絞り込めているので,これを活性化する転写因子が何であるかを同定したい。そのうえで,ホヤのHox1とオタマボヤのHox1を活性化する転写因子が共通なのか別物なのかを解明して,論文として発表したい。心臓原基についても,レチノイン酸の機能阻害をした胚における心臓分化を観察する方法で,アプローチしたい。
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Research Products
(6 results)