2011 Fiscal Year Annual Research Report
系統的慣性と性選択の対立:昆虫における触覚節数の集団内多型の進化維持機構
Project/Area Number |
22570215
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 みどり 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20294910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中平 賢吾 九州大学, 大学院・農学研究院, 非常勤研究員 (70596585)
柳 真一 九州大学, 総合研究博物館, 専門研究院 (50532363)
山田 直隆 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (20304769)
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Keywords | 昆虫 / 遺伝 / 母性効果 / 進化 / 系統進化 / 多型 |
Research Abstract |
本研究の2年目である平成23年度は、触角節数の遺伝率と他形質との相関を解明するため、触角節の少ない雌雄ペアを人為選択した系統と、この選択系統と同じ開始集団からランダムに同じペア数を同じ世代数、並行して選んだ非選択集団との間で触角節数を比較した。 人為選択は、触角節以外の形質(生息密度、発育期間、性的形質など)に選択圧がかからないように注意しながら、毎世代、触角節が最も少ない20ペアを選択した。コントロール(非選択集団)は毎世代ランダムに20ペアを残した。9世代後には選択系統は触角が節の融合や欠損によってロントロール系統より平均2節少なく、さらに平常の飼育集団では現れない8節や7節の触角を有する個体が現れていた。また、左右の触角節数が異なる個体がいることや、選択系統でのみ、雌の方が雄より触角節が少ないことが判明した。そして、選択系統の方が産卵数の少ないペアが多く、体サイズが小さく、やや黒化していた。 選択系統で産卵数が少なかったのは、雌雄ともに異常節数を持つペアで最も適応度が高いという前年度の交配実験の結果と矛盾し、人為選択の過程で遺伝的ドリフトによって集団内に繁殖に不利なアリルが偶然に固定した可能性もある。雌の方が触角節を失いやすいのは、雄が交尾のために雌のフェロモンを触角で感知する必要があるため触角の適応的重要性が高いのに対し、雌はおそらく産卵時に寄主植物を前脚等で接触して感知できる故、触角の適応的重要性は雄ほど高くないためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人為選択を当初は7世代ほどで終わる予定だったが、世代毎の触角節の平均値の減少が減速しなかったので、平均値減少速度がやや飽和した9世代まで選択実験を延長して行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に行う予定だった人為選択系統とコントロール系統の生活史形質および雌フェロモン量の比較を、今年度に繰り越して行う。
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