2012 Fiscal Year Annual Research Report
多面的アプローチによる生活史の生物考古学的研究―中近世都市遺跡出土人骨の分析―
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22570222
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
星野 敬吾 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (30308506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10374943)
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20360216)
五十嵐 潤子(右高潤子) 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (40398962)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 人類学 / 解剖学 |
Research Abstract |
(1)分子生物学的研究では、脊椎カリエスを呈する17世紀北海道伊達市有珠4遺跡アイヌ人骨(椎骨片および仙骨・寛骨の一部)から採取したDNAを用いて、PCRによる結核菌DNAの検出を再検討した。具体的には、結核菌特異的な遺伝子に対するプライマーを再度設計し、塩基配列レベルでの検出確認を目指した。その結果、いくつかの試料において16s rRNA、MPT63遺伝子の増幅が観察された。これら増幅された遺伝子の塩基配列をシークエンサーにより解析したところ、16srRNAは少なくとも抗酸菌における配列と一致し、MPT63は結核菌群における塩基配列と完全に一致した。 (2)鎌倉市由比ヶ浜地域に所在する中世集団墓地遺跡青果市場地点は、1986年に鎌倉市教育委員会により調査が行われ,単体埋葬墓から中世人骨が出土 した。未報告人骨の整理と記載を行い、中世鎌倉の人々の骨病変や人口構造を検証した結果、人骨の個体数は51体で、齲歯率は5%であり、縄文時代 や江戸時代よりも有意に少なかった。特殊所見として、刀創を男性1体の左大腿骨6箇所・左脛骨5箇所、女性1体の頭蓋1箇所に認めた。 (3)関東地方江戸時代人の発育期の健康状態を明らかにするため、一橋高校遺跡(江戸庶民)、増上寺子院群(江戸武家)、塩川遺跡(山梨県農村部)から出土した近世人骨161体について、エナメル質減形成の出現状況を調査した。その結果、減形成出現率は、武家を主体とする増上寺子院群人骨で最も高い値を示すことが明らかになった。増上寺子院群人骨には幼小児期に志望した人骨も多く含まれており、武家階層における未成年の健康状態が必ずしも良好ではなかったことがうかがわれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。アイヌ人骨から抽出したDNAより、結核菌DNAをPCRにて検出することが出来た。しかし鎌倉市由比ケ浜南遺跡の中世人骨についての再検討が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究手法を継続し、報告としてまとめる。それらに加えて分子生物学的研究では、古人骨のDNA抽出から結核菌DNA検出まで、一連の操作が確立されたことにより、最終年度は、鎌倉市由比ケ浜南遺跡の中世人骨について、抽出と検出を再検討する予定である。
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