2012 Fiscal Year Annual Research Report
頭蓋・四肢骨計測値における変異の規則性と限界を探る
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22570224
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
溝口 優司 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 部長 (00110106)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 形態 / 進化 / 地理的多様性 / 骨計測値 |
Research Abstract |
我々は、一般に、ひと目その形態を見ただけで、それがヒトであるか否かを識別することができる。恐らく、それは、ヒトと言われる動物の形態の変異に規則性と限界があるからだろう。その規則性と限界の原因を明らかにすることを目指して、まずは新石器時代以降の人類集団の頭蓋・四肢骨計測値について、これ以上はヒトではあり得ない、という各変数の変異の限界、ならびに複数の変数の変異の規則性すなわち共変動性の方向、程度、限界などを客観的に見極めたい。これが本研究の目的である。 この目的を達成するために、世界中の新石器時代以降の人類集団について、頭蓋・四肢骨計測値の平均値を文献調査によって収集し、最後にそれら計測値の変異の限界および共変動の規則性を、主成分分析法、正準相関分析法などを使って調べるつもりであるが、本計画3年目の平成24年度は、以下のように研究を進めた。 まず、データ収集は、22・23年度に引き続き、日本の縄文時代から現代までの人骨、ならびにヨーロッパ・中国などの遺跡出土人骨を中心に行なった。そして、初年度に構築した手書き文字OCR(Optical Character Reader;光学式文字読取装置)に基づく半自動入力システムにデータを入力するため、計測値データシートを分析予定集団の1/3程度について作成した。これは現在も継続中である。 ほかに、本研究計画に関連のある基礎的分析として、有限要素拡縮法により、頭蓋の計測点近傍における三次元構造的偏倚の方向と程度が歯の咬耗程度とどのような関係にあるのかを検討した。結果、咬耗程度が強いほど前頭結節頂点が内側方向に偏倚する傾向があることなどを発見した。本計画が目的とする頭蓋形態の群間変異の原因探求のためにも、このような群内での変異傾向を把握しておくことは非常に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コンピュータに入力すべき計測値を文献から引き写して、ある同じ形式のデータシートを作成する、という作業が遅れ、予定していた試行的多変量解析ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記データシート作成作業を最終年度の平成25年度にはもっと集中的に行ない、少なくとも25年度前半には、その作業を完了させ、年度末には成果を然るべき学術雑誌に投稿する予定である。 データ入力さえできれば、統計分析のための自作プログラムは整っているので、研究計画の変更や研究遂行上の問題はない。
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