2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安井 康夫 京都大学, 農学研究科, 助教 (70293917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正之 石川県立大学, 生物資源工学研究所, 准教授 (00320911)
相井 城太郎 新潟薬科大学, 応用生物学部, 助教 (10391591)
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Keywords | 二花柱性 / 二花柱型自家不和合性 / ソバ / 他殖性 / 自殖性 / 進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は世界に先駆けてソバの二花柱型自家不和合性を司る遺伝子(S遺伝子)を同定し、C.Darwinの時代からの謎であった花の形態多型と自家不和合性の関連を分子レベルで解明することにある。本年度は以下の研究成果を得ることができた。 1.短柱花および長柱花の雌蕊よりmRNAを抽出し、次世代シークエンサーによる塩基配列決定を行った。その結果、短柱花のゲノム中に特異的に存在する2つの遺伝子(SSG2およびSSG3)を発見した。またこれら2遺伝子はS遺伝子座に座上していることが分かった。 2.BBLASTXによる相同性解析の結果、SSG2と相同性の高い遺伝子は見つからなかった。二花柱型自家不和合性を有するソバ個体においてSSG2に大きな欠失がみられたことから、SSG2は二花柱型自家木和合性には関与していないことが分かった。 3.SSG3は転写因子であるEARLY FLOWERING 3 (ELF3)と相同性が高いため、本遺伝子をS LOCUS EARLY FLOWERING 3 (S-ELF3)と命名した。二花柱型自家不和合性を有するソバ個体において、S-ELF3に大きな構造変化は見られなかった。また二花柱型自家不和合性を有するソバの近縁野生種においては、やはり短柱花個体のゲノム中にのみS-ELF3が存在した。さらに二花柱型自家不和合性が崩壊した自殖性野生種ではS-ELF3にフレームシフトを伴う大きな構造変化が見られた。転写解析の結果、S-ELF3は花器官で特異的に発現している、ことも示された。これらの結果からS-ELF3は短柱花形質を制御している転写因子であることが分かった。 4.重イオンビームを用いることによりS遺伝子座周辺を欠失した突然変異個体を得ることができた。本突然変異個体は今後の重要な材料となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界に先駆けて二花柱型自家不和合性に関与する遺伝子(S-ELF3)を同定することができた。ソバ属内での進化的解析を終え、S-ELF3の崩壊と自家不和合性の崩壊に密接な関係があることが分かった。さらに重イオンビームを用いてこれまでに存在しなかったS遺伝子座周辺を完全に失った突然変異個体を得ることもできた。突然変異個体の獲得は予想を大きく上回る成果であり、今後の二花柱型自家不和合性の分子機構の解明において、重要な材料となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後変異個体のゲノム解析を行い、欠失領域を岡定する。手法はBACライブラリーを用いたゲノミックウォーキングおよび次世代シークエンサーを用いたゲノム配列の解析となる。ゲノム配列の解析に関しては資金的に無理はあるが、ゲノム支援を受けることにより、達成可能である。これらの研究によりS遺伝子座に座上するすべての遺伝子が明らかになると考えられる。
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