2011 Fiscal Year Annual Research Report
チガヤ法を用いた半数体育種法における染色体消失誘発のゲノム同定と遺伝的機構の解明
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22580004
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
向井 康比己 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30110795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 剛 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10314444)
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Keywords | 半数体育種 / タルホコムギ / マカロニコムギ / 染色体消失 / Dゲノム / ヘテロクロマチン / チガヤ / コルヒチン |
Research Abstract |
本研究は、チガヤ花粉をかけた場合、ムギ類における半数体制御機構に関わっているゲノムの探索と遺伝子群の座乗染色体を明らかにし、その染色体消失の原因について分子細胞遺伝学的に解明することを目的とする。昨年度の結果から、タルホコムギ(=Aegilops tausshii)(Dゲノム)で半数体が得られることがわかったので、Dゲノム染色体にはチガヤゲノムを速やかに排除する遺伝子と共に半数性胚を成長させる遺伝子が存在すると予測した。本年度は、これら遺伝子がDゲノムのどの染色体に存在するかを、マカロニコムギのAまたはBゲノム染色体をタルホコムギのDゲノムの同祖染色体と置換した11系統(染色体置換系統)にチガヤを交雑し、半数体が得られるかどうか調査した。受粉後一定時間ごとに子房を固定し、初期発生から2週間後までの半数性胚の形成率を解剖学的あるいは細胞組織学的に調べた。その結果、7D染色体には半数体制御に関する両遺伝子が座乗していることがわかった。また1D、2D、5D染色体も半数体形成に関与していることが明らかになった。7D染色体の半数体誘発遺伝子をマカロニコムギに導入することで、4倍性コムギや6倍性ライコムギにおいてもチガヤ法で半数体育種が可能となり、本研究成果はダブルハプロイド法による品種改良に大きく貢献すると思われる。チガヤ法による半数体育種の短縮化のために、未熟胚のときにコルヒチンによる染色体倍加処理をin plantaで行う方法について、処理時期やその濃度などを変えて条件検討を行った。しかし、染色体が倍加したと思われる胚は致死となり、倍加植物を得ることが出来なかった。また、各種抗体を使った免疫染色の実験から、コムギとの雑種胚におけるチガヤ染色体の消失は、チガヤ染色体のヘテロクロマチン化が原因ではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1)半数体形成に関与するDゲノム染色体の同定、2)染色体消失の分子的機構の解明、3)コルヒチン直接処理による半数性胚の染色体倍加の3つの課題からなり、全部の課題をこなすことができた。1)の課題で染色体の同定ができたのは大きな成果と考える。また、未熟胚にコルヒチン処理をすると胚が致死になるので、in plantaで染色体倍加は困難であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
チガヤゲノムを排除する遺伝子または半数性胚を成長させる遺伝子が、Dゲノムの1D、2D、5D、7D染色体に存在することがわかったので、次年度においてはそれぞれの染色体上の遺伝子がどのような役割をもつのか、またAまたはBゲノムの同祖染色体がどう影響するのか調べる予定である。チガヤ染色体消失の分子的機構について、DNAのメチル化、各種ヒストン修飾、CENH3の分子種の違いについての分子細胞学的研究が必要である。
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Research Products
(1 results)