2011 Fiscal Year Annual Research Report
コムギとフザリウム菌の遺伝子発現クロストーク解析による赤かび病抵抗性の解析
Project/Area Number |
22580009
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
坂 智広 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (80343771)
|
Keywords | 植物育種・遺伝 / 抵抗性・耐性 / 遺伝子発現 / マイコトキシン |
Research Abstract |
コムギの遺伝子型が腐生性フザリウム菌の病原性及びマイコトキシン産生量にどのように影響するかについて、菌の細胞増殖関連遺伝子と毒素産制Tri遺伝子群の発現量の消長を指標パネルとして宿主-病原菌間のクロストークを解析し、コムギの抵抗性・毒素低蓄積性に係る遺伝子の探索を進めた。 1.フザリウム菌の遺伝子発現パターンをパネルにして、菌に病原性・毒素産生性を発揮させないコムギの遺伝子型と条件解析を行った。抵抗性品種のSumai 3と罹病性品種のGamenyaにおいて赤かび病菌接種後7目目にRNAを抽出し、RT-PCR法を用いて菌体のバイオマスを測定した結果、GamenyaではSumai 3の13倍のバイオマスが測定された。菌体のバイオマスに関するQTL解析の結果から、赤かび病の病徴とフザリウム菌体のバイオマスの被害は、ロムギの異なる抵抗性機構で制御される可能性が示唆された。そこで、ニムギの抵抗性領域を限定するため、Sumai 3x Gamenyaの半数体倍加119系統を用いFHBの病徴率、菌体のバイオマスからQTL解析を行った結果、3A、3B、2D染色体上に病徴率を、3B染色体上に菌体のバイオマスを制御する有意なQTLを検出した。 2.赤かび病に感染・発病させた抵抗性/罹病性それぞれのコムギの遺伝子発現のプロファイリング比較のため、病原菌の毒素合成遺伝子破壊株を作出し、菌側からの反応を解析する変ことによりフザリウム菌感染時のコムギ応答遺伝子の変化を遺伝子の発現により観察を進めた。本年度は、赤かび病菌形質転換系を確立し毒素合成遺伝子ノックアウトコンストラクトを作成して、コムギ毒素応答性遺伝子の探索を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フザリウム菌の遺伝子発現パターンをパネルにして、菌に病原性・毒素産生性を発揮させないコムギの遺伝子型と条件を解析するために、病原菌のRNAを抽出してきているが、用いる試薬と手法によりRNAの抽出効率のばらつきが大きく、標準化をするのに時間がかかった。また、赤かび病の発病環境条件に左右されやすく、昨年の下記節電対策等により施設を用いた十分な実験を行うことが困難であったため、計画にある(3)赤かび病に感染・発病させた抵抗性/罹病性それぞれのコムギの遺伝子発現のプロファイリング比較と、(4)菌の病原性・毒素産生性を抑えるコムギ遺伝子発現情報とクロストークの解析が十分に進められなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、赤かび病の感染・発病時にフザリウム菌がコムギの遺伝子型に反応して病原性・毒素産生に係わる遺伝子発現を変化させるのに対し、感染した抵抗性/罹病性コムギにどのような遺伝子発現の変化が見られるかを、マイクロアレイを用いた解析によりプロファイリング比較を行い、それにより環境作用を受けないコムギの赤かび病抵抗性メカニズムと、マイコトキシンを蓄積しにくいコムギの遺伝子型を解明する。遺伝的に毒素蓄積を低く制御することが可能となり、毒素低減による菌糸伸長の抑制による病害抵抗性の付与が期待でき、腐生性植物病害に対する新たな遺伝・育種的アプローチを切り開く。
|