2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯産花木ジャカランダの種間交雑不和合性の解明と打破に関する研究
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22580035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮島 郁夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 准教授 (20182024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 伸雄 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (00362426)
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Keywords | ジャカランダ / オオバジャカランダ / 花色 / アントシアニン / フラボン / コピグメンテーション |
Research Abstract |
ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)はアルゼンチン北部原産の高性の花木で,初夏に青紫色の花を樹冠全体に咲かせ,その美しさから世界三大花木のひとつと言われている.一方,オオバジャカランダ(J.cuspidifolia)はジャカランダよりも大型の葉や花を持ち,花色はジャカランダよりも赤みが強いのが特徴である.本課題では両種の交雑育種における種間交雑不和合性の要因解明とその打破を目的としており,本年度は研究実施計画書[課題1]:両種の花色の違いの要因を明らかにした. ジャカランダの花弁にはアントシアニンであるマルビジン配糖体とともにフラボン類および桂皮酸類が含まれているが,オオバジャカランダの花弁にはフラボン類がほとんど含まれていなかった.ジャカランダ生花弁の吸収スペクトルの極大吸収波長は539,575および625nmであった.本種の花弁から抽出したアントシアニン分画単独,またはアントシアニンと桂皮酸類分画の混合溶液は赤色を示したが,アントシアニン分画10mg/mlに対しフラボン分画3mg/ml以上の割合で混合した溶液は青紫色を呈し,スペクトル曲線は生花弁のそれと酷似していた. 数種の花卉類ではアントシアニンとフラボン類,もしくはアントシアニンと桂皮酸類とが液胞内で共存し,複合体を形成することによるコピグメンテーション(補色素効果)によって花色が青色化することが報告されている. このことから,ジャカランダ花弁の青紫色はアントシアニンとフラボン類によるコピグメンテーションによって発色しているのに対し,オオバジャカランダではコピグメンテーションが起きていないために赤みの強い花色になっている可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度から開始した本研究は2年を経過し,これまでにジャカランダとオオバジャカランダとの種間交雑不和合性の原因が花粉管の侵入不良によるものであることを明らかにすることができた.この成果は本年7月にベルギーで開催される2nd International Symposium on Woody Ornamental sof the Temperate Zone」で発表の予定である.また,すでに得られている雑種個体のなかには本年度開花するものもあるものと思われ,これらの個体の形質調査や花色素分析などを行い優良な形質をもつ個体の選抜を行う予定である.このように,本研究は計画に沿った活動が行われてきており,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で,青紫色の花をもつジャカランダと,赤紫色の花をもつオオバジャカランダとの主要なアントシアニンは同一で,基本の発色団としてマルビジンをもち,それにグルコースが2分子直鎖状に結合してさらに酢酸と思われる有機酸が結合していると推定されている.今後は,この主要なアントシアニンの構造を正確に決定する予定である.また,ジャカランダの青紫色の発現に関与しているフラボン(アピゲニン配糖体)についても定性を試みる. さらに,すでに得られているジャカランダとオオバジャカランダとの雑種個体については,本年度開花するものもあると思われるので,葉や花器の形態調査,花色素構成の調査を進める予定である.
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Research Products
(2 results)