2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイアンソウイルスの細胞間移行とゲノム複製機構との関連性の解明
Project/Area Number |
22580047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
海道 真典 京都大学, 農学研究科, 助教 (20314247)
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Keywords | 植物ウイルス / 移行タンパク質 / 細胞間移行 / GAPDH-A / 複製 / 細胞内局在 / 小胞体膜 |
Research Abstract |
申請者は二分節型ゲノム構造を取るプラス鎖RNAウイルスでマメ科植物の重要病原ウイソレスであるRed clover necrotic mosaic virus (RCNMV)の細胞間移行機構の分子レベルでの解明を目指している。これまでの研究で、(1)RCNMVの細胞間移行に中心的な役割を果たす移行タンパク質(MP)はRCNMV RNA1を複製する複製酵素複合体にリクルートされて細胞表層の小胞体(ER)膜上に形成される小斑点状構造に局在し、(2)この局在性はRCNMVの細胞間移行にとって必須であることを明らかにした(Kaido et al.,2009,2011)。 昨年までにRCNMV MPと相互作用する宿主植物(Nicotians benthamiana)因子を、Tandem affinity purification法と質量分析によって多数同定した。平成23年度の研究では、それらの中から葉緑体局在シグナルを持つGlyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH-A)遺伝子をクローニングし、RCNMV増殖における役割について調べた。ウイルスベクターによってGAPDH-A遺伝子をサイレンジンクした植物葉におけるRCNMV増殖レベルは、サイレンジンクを誘導していない葉と比較して低下するが、プロトプラストではサイレンジンクの有無に拘わらず同レベルのRCNMV RNAおよびMP蓄積が観察されたことから、GAPDH-AはRCNMVの細胞間移行に関与する宿主因子であり、MPの安定性には関係無いことが明らかとなった。またRCNMV RNA1の複製が起きる条件下で、葉緑体局在性のGAPDH-Aタンパク質はER膜上の小斑点状構造へも局在するようになった。さらに、GAPDH-A遺伝子をサイレンジングした植物細胞ではRCNMV MPのER膜上の小斑点状構造局在が著しく減少した細胞が多数観察された。これらの結果と、RCNMVの複製酵素複合体を構成するp27タンパク質と相互作用する因子としてGAPDH-Aが単離されたという結果(Mine and Okuno, unpublished results)とを総合して、GAPDH-AはRCNMVの複製酵素複合体中のp27とMPとを橋渡しする因子であり、MPが複製酵素複合体中のRCNMV RNA1を捕捉するのを助けることを通じてRCNMVの細胞間移行に寄与するというモデルを提唱したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に関してこれまでのところ大きなトラブルや見込み違いもなく、順調に進展している。サイレンシング誘導植物からのプロトプラストの単離とウイルス感染実験で多少もたついたが、植物の培養条件などを検討した結果、解決できた。またサイレンシング誘導条件にも検討を加え、ほぼ100%の植物にサイレンシング誘導できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
RCNMVの細胞間移行におけるGAPDH-A遺伝子の働きについての作業仮説を証明するために、GAPDH-Aタンパク質とRCNMV MPおよびp27タンパク質との結合について、免疫沈降法やGST-pulldownアッセイによって、in vivoおよびin vitroで結合し得るのか否かを調べる予定である。さらにBiFC法についても検討したい。 さらに、RCNMV以外のウイルス増殖への影響があるのかどうか調べ、影響を受けるウイルスと受けないウイルスの移行タンパク質との相互作用の有無や、移行タンパク質の局在性について調べることを計画している。
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Research Products
(18 results)