2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580050
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
多賀 正節 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (80236372)
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Keywords | Phytophthora / 疫病菌 / ゲノム / 倍数性 / ジャガイモ |
Research Abstract |
平成23年度は,プロトプラストの単離培養によって半数体元株であるMX980400株から前年度作出したn系統(菌糸中のn核の割合が90%以上)と2n系統(2n核が90%以上)を使用して下記の成果を得た。 1.核DNAとしてITSとEas,ミトコンドリアDNAとしてP3(rpl14,rp15,tRNAs)とP4(cox1)の計4領域について塩基配列を決定し,Phytophthora infestans及びPhytophthora属他種の多数の菌株のデータを加えて分子系統解析を行った。その結果,n系統(したがって,MX980400株も)はコスタリカ,メキシコ,ペルー産のP.infestans菌株と同じcladeに属することが明らかとなった。 2.MX980400株から2n系統が出現した理由を探るために,2n系統のRas及びITSの塩基配列を決定し,n系統や標準的な2n株と及び比較した。その結果,n系統と2n系統の配列が一致したので,2n系統の出現はMX980400株のヘテロカリオン性に起因するのでなく,n核の2n核化によって出現した可能性が高いということが示唆された。 3.半数性の生育に及ぼす効果を調べるために,n系統と2n系統及び標準株(2n)の栄養培地(pea broth agar,ryeB,V8)上での生育を比較した。その結果,n系統の菌糸生育(菌そう直径)は2n系統の50~60%,標準株の70~80%程度で,遊走子形成量も少なかった。したがって,植物の場合と同様,半数性は生育に負の効果をもたらすことが示された。 4.半数体から突然変異体作出する実験の一環として,卵菌類では未報告のnit変異体の作出を試みた。その結果,pea broth agarにKCIO_3を2%(w/v)添加した培地がnit変異によると思われるセクターを生じさせるのに有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成22年度まで研究に参加していた大学院生が家庭事情により退学したため,年度当初計画していた細胞遺伝学的観察の進捗が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最終年度であるから,これまでのフローサイトメトリーや分子系統解析のデータを取りまとめて年度内に原著論文として投稿する予定である。また,研究グループに新たに大学院生1名と学部生2名が加わったことにより,平成24年度は充実したマンパワーで研究を遂行できるので,細胞遺伝学的観察の遅れの挽回が期待できる。
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