2011 Fiscal Year Annual Research Report
マダニ抗菌ペプチドDefensinの生理機能と合成誘導機構の解明
Project/Area Number |
22580058
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
TAYLOR DeMar 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50261772)
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Keywords | マダニ / Ornithodoros moubata / Defensin / Rel / 転写制御 / 抗菌ペプチド / Soft tick / 自然免疫 |
Research Abstract |
本研究はO.moubataにおいてdefensin遺伝子がRel/NF-κBで制御されているのか明らかにすることを目的とした。まず、吸血後のOmRelとdefensinの遺伝子発現を定量した。その結果、OmRelとdefensinの発現のピークには時間差がみられ、OmRelがdefensinの転写制御に関与している可能性が考えられた。そこでRNA干渉によりOmRelのノックダウンを行い、OmRelが吸血後のdefensinの発現誘導に関与するかを調べた。その結果、defensinA,C,D遺伝子の発現が有意に抑制された。次に、OmRelが直接defensinの発現に関わっているのかを培養細胞のトランスフェクション実験で解析した。OmRelの過剰発現により、defensinCで著しいプロモーター活性の上昇がみられ、さらにdefensinCプロモーターのκB siteと予測される領域の欠失によりそのプロモーター活性が有意に減少した。さらにゲルシフト法でこのκB siteにOmRelが特異的に結合することも明らかとなり、以上のことからdefensinCの制御にOmRelが関わっていることがわかった。本研究ではもう1種類のRel/NF-κBであるRelishのcDNAをクローニングした。得られたO.moubataのRelishは昆虫とは分岐した鋏角類と同じグループに分けられた。これまでいくつかの吸血昆虫で吸血による抗菌ペプチド遺伝子の発現誘導が報告されているが何によって引き起こされるのかは明らかとなっていなかった。しかし、本研究により少なくともOmRelがその発現誘導に関与していることが初めて示された。したがって、本研究はその発現誘導メカニズムの解明に大きく貢献するものであり、将来的にはダニをはじめ吸血性の節足動物の防除法の開発につながることが期待される。今、上の研究成果を投稿する科学論文は準備中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Toll経路のOmRel因子およびIMD経路のRelish因子を同定することができた。そしてOmRelがdefensinの転写制御に関わることが明らかになった。またOmRelのノックダウン実験により、OmRelが吸血後のdefensinの発現誘導に関与していることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の実験によりToll経路、IMD経路における因子を同定することができたため、今後はO. moubateを用いて以下の点を検証していく。 1.O. moubataにおいてdefensin遺伝子がRel/NF-κB Relish因子によって制御されているのを確認するために培養細胞のトランスフェクション実験、プロモーター活性実験、ゲルシフト実験、またRNA干渉によりOmRelのノックダウンを行う。 2.細菌応答によるRelとRelishの活性化の確認に示すように、細菌の進入からDefensin発現の間に起こるRelタンパク質の挙動変化を抗体を用いて免疫染色を行い明らかにする。 3.栄養刺激を受けたTOR経路の因子がRel経路中のDefensin合成を誘導するかどうか。TORをノックダウンすることでRel及びDefensinの発現が制限されるかどうかを検証する。
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Research Products
(4 results)