2010 Fiscal Year Annual Research Report
殺虫剤抵抗性分子検出に向けての昆虫シトクロムP450過剰発現変異の研究
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22580064
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
冨田 隆史 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (20180169)
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Keywords | 殺虫剤抵抗性 / シトクロムP450 / 昆虫 / 遺伝学 / ゲノム / ピレスロイド系殺虫剤 / 遺伝子重複 / シス作用性突然変異 |
Research Abstract |
ネッタイイエカで過剰発現し,ピレスロイド系殺虫剤抵抗性に寄与するシトクロムP450(略記P450)分子種と突然変異について解明し,そのような突然変異を分子ジェノタイピングすることに基づきP450の活性亢進に基づく殺虫剤感受性低下を評価する手法を開発することを本研究の目的とし,2010年度に下記成果を得た。(i)成虫で過剰発現するP450:2009年にケニアで採集した幼虫コロニーを使い,殺虫剤による室内選抜を行った。殺虫剤選抜を始める前の室内コロニーの幼虫と成虫における抵抗性比(殺虫剤感受性系統OGSとの対比に基づく)は,それぞれ,985倍と37倍であったが,7世代におよぶペルメトリンの局所施用による成虫選抜の後に,成虫における抵抗性比は343倍に達した。本室内選抜コロニーでは,神経作用点ナトリウムチャンネルの感受性低下をもたらす要因が幼虫と成虫において共通に10倍程度の抵抗性に貢献していることを考慮しても,殺虫剤代謝酵素の活性亢進をもたらす要因が十分選抜されたといえ,次年度に予定するマイクロアレイ解析に適するコロニーが得られた。(ii)幼虫で過剰発現するP450:幼虫期に過剰発現し,ピレスロイド抵抗性の要因となっているCyp9m10遺伝子について,構造遺伝子と周辺領域のハプロタイプ,過剰発現性,幼虫期のペルメトリン抵抗性への寄与を,種々の地理的起源に由来するピレスロイド抵抗性個体を使い研究した。その結果,Cyp9m10上流域へのトランスポゾン配列CuRE1の挿入(A)→コード領域内の一塩基置換変異(B)→約100kb周辺領域を伴う遺伝子重複(縦列倍加)(C),の順にハプロタイプが進化しながらシス作動性の過剰発現をもたらす変異が蓄積したことを明らかにした。また,野生型遺伝子との遺伝学的な対比に基づき,これら変異が蓄積するに伴い,過剰発現の増大率を上回る抵抗性への寄与率をもつハプロタイプが派生したことを示した。
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Research Products
(3 results)