2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズ根粒菌の地理的分布と環境適応機構に関する研究
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22580068
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
佐伯 雄一 宮崎大学, 農学部, 准教授 (50295200)
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Keywords | ダイズ根粒菌 / Bradyrhizobium / 遺伝子多型 / 微生物生態 / 共生 / Rj遺伝子 / 環境因子 / 緯度経度 |
Research Abstract |
本研究は、ダイズ栽培地の緯度が日本とほぼ同じであるアメリカ合衆国および経度が沖縄とほぼ同じであるフィリピンの土着ダイズ根粒菌の分布と多様性を調査し、根粒菌の土着化と優占化に関する知見を蓄積し、有用根粒菌の実用的接種技術の開発に資することを目的として研究を進めている。これまでの研究で、日本の土着根粒菌においては、北から南へ根粒菌フロラが変遷しているという結果を得ているため、土壌温度を解析対象の環境因子とし、アメリカおよびフィリピンにおける土着ダイズ根粒菌の分布を、遺伝子多型を基に数理生態学的に検証している。平成22年度、農林水産大臣の許可を取得し、USDA-ARS研究者の協力の下、アメリカのダイズ圃場の土壌(Florida、Louisiana、Georgia、Alabama、Kentucky、North Carolina、Ohio、Michigan)を採取・輸入し、植物インキュベーターにおける一定環境下で、各種ダイズ品種を栽培し、着生根粒を採取した。 本年度(平成23年度)、すべての土壌からダイズのRj遺伝子型による根粒菌のカルチャーコレクションを調製し、分離株の根粒菌ゲノムを鋳型とした16S-23S rDNA ITS領域の制限酵素断片長多型解析を行った。その結果、Michigan・OhioではB.japonisum USDA123株、Kentucky・North CarolinaではB.japonisum USDA110株とUSDA6株、Florida・Louisiana・Georgia・AlabamaではB.elkaniiのクラスターに含まれる株が優占していた。この結果は、日本におけるダイズ根粒菌の分布と類似したが、中緯度から南では日本よりもB.elkaniiの占有率が高いことが明らかとなった。これらの結果より、ダイズ根粒菌の土着化・優占化に及ぼす環境因子として温度の影響が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカの南北の土壌及びフィリピンの土壌を採取、輸入し、解析に供試しており、「研究の目的」に沿ったデータを採取できている。現在、温度による根粒形成遺伝子の発現解析にも取り掛かっており、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
各種Rj遺伝子型宿主ダイズから分離したアメリカとフィリピンの土壌の土着ダイズ根粒菌の16S-23S rDNA ITS領域の多型解析のデータから地理的分布および宿主遺伝子型による遺伝子多様性や群集構造解析を数理生態学的に行ない、ダイズ根粒菌の群集構造に関する温度や宿主遺伝子型による影響を評価する。また、各分離株の根粒形成遺伝子発現の温度依存性を調査し、根粒着生と土壌への優占化の関係を検証する。これらの研究は、ダイズ根粒菌の生態に関する知見を与えるだけでなく、地球温暖化による農業への影響を考慮し、対策を講じるための基礎知見となることが期待される。
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Research Products
(7 results)