Research Abstract |
本研究では,加水分解酵素(アノマー保持型・反転型の両者)改変酵素を作出し,水解酵素のオリゴ糖等効率的生産への応用利用を示す. 1.アノマー保持型: 過年度実施の糖転移に関わる重要構造因子の同定を受けて,H23年度は,これを加水分解酵素(DG酵素,グルコシダーゼ類)に導入し,変異酵素を作出した.水解・転移の各反応初速度を精密に測定し,転移率(転移速度の対全反応速度比)により評価した.DG酵素および各種グルコシダーゼ類の変異酵素には,転移率の向上したものが見出された.設定反応条件下で専ら転移反応のみを触媒する酵素も得られた.転移率増加に速度増加を伴う変異酵素も得られた.高濃度側で基質阻害様速度低下を示す変異酵素も得られ,これが糖転移によるものであることを速度論的に証明した. 2.アノマー反転型: アノマー反転型加水分解酵素(GA酵素)に一次構造上類似する転移酵素(DD酵素)を引き続き解析した. 1.ドメイン構造の推定:より詳細な構造予測により,5ドメイン(N1・N2-A-B-C)構成であると判断した. 2.推定触媒残基の機能解析:触媒ドメイン(A)は,GA酵素類の触媒残基(塩基触媒と酸触媒)に相当するDD酵素アミノ酸残基は活性に必須である.生化学的解析(基質の脱離基に依存した速度変化,および逆アノマー型フッ化グルコースを用いたグリコシンターゼ反応等)により,活性に必須な2残基の機能(酸塩基触媒基と求核触媒基)を明らかにした.ただし,求核触媒基に関しては,予測構造とあわせて,異なる反応の可能性もあり,検証・確定を進めている. 3.酵素結晶化:高度精製酵素標品を用いて,結晶化条件を検討した.これまでの所,X線回折に適した結晶は得られておらず,進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特にアノマー保持型酵素については,加水分解酵素を変異導入により(反応条件により)ほぼ完全に水解活性を失いしかし高い速度で転移反応を触媒する酵素に変換することに成功した.予定以上の成果である.アノマー反転型酵素は,DD酵素が特異な反応をするために触媒機構を詳細に解析しており若干計画より遅れているが,DD酵素および水解酵素の変異体作成・解析進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
アノマー保持型酵素に関しては,転移活性の高機能化を図る.すなわち,糖供与体・糖受容体に特異性を与えて,受容体の高重合度に資する性質付与を目指す.供与体・受容体比率により,オリゴ糖重合度の制御が可能と考える.アノマー反転型酵素に関しては,DD酵素の触媒機構を早急に決定し,作成中の変異酵素の解析を実施し,水解活性を示す変異酵素を見出す.アノマー反転型酵素(GA酵素類およびTre酵素)にも予想DD酵素触媒部位周辺の残基を導入し,糖転移活性を有する変異体を見出す.
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