2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580102
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中川 寅 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (10281049)
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Keywords | プロレニン受容体 / レニン・アンジオテンシン系 / 細胞内局在 / 小胞体 / トランスロケーション |
Research Abstract |
(プロ)レニン受容体(PRR)は昇圧酵素レニンならびにその前駆体プロレニンをリガンドとする1回膜貫通型受容体である。PRRの細胞内分布ならびにその局在機構については不明な点が多い。申請者はこれまでに、PRRの細胞外領域に結合し、PRRを小胞体に局在させる膜タンパク質が存在している可能性を示唆するデータを得ており、本研究でその実証を目指している。 本年度、PRRの小胞体局在が静的な「残留」と動的な「回収」のどちらによるものかを調べた。分泌型GSTのC末端にヒトPRRの全長(Full)、PRRの細胞外領域(ECD)、もしくは小胞体局在シグナルとしてよく知られるKDEL配列(KDEL)を付加したGST融合タンパク質をCOS-7細胞に導入・発現させたところ、分泌型GSTが培地に分泌されたのに対して、Full、ECD、KDELは細胞内に貯留した。ミセル水性二相分配法を用いて細胞を水溶性タンパク質画分と膜結合性タンパク質画分に分画した結果、分泌型GSTとKDELが水溶性タンパク質画分に回収されたのに対し、ECDは膜貫通領域を持たないにも関わらず、Fullと同様に膜結合性タンパク質画分に回収された。間接蛍光抗体法によりこれらの細胞内分布を観察した結果、Full、ECD、KDELは小胞体様の局在パターンを示したが、GSTは細胞中に殆ど検出されなかった。これらの結果から、PRRの小胞体局在機構として細胞外領域を介する「残留機構」が支持された。 また本年度、FLAGタグを付加したヒトPRRを安定発現させたヒト腎臓細胞から溶解液を調製し、アフィニティー担体を用いてPRRが形成するタンパク質複合体を精製した。複合体を形成しているタンパク質をSDS-PAGEによって分離後、質量分析によってPRR結合タンパク質の候補分子を同定した。現在、候補タンパク質について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「研究の目的」に記載した3つの具体的目的のうち、「(1)PRRと結合する推定上のタンパク質」に関しては候補分子を同定済みであり、「(2)PRR結合タンパク質とPRRの結合特性」に関しては情報の一部が得られており、全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度同定されたPRR結合タンパク質の候補分子について、引き続き解析を進める。候補分子とPRRとの結合がアーティファクトでなく、生理的条件下(細胞レベル)で実際に起こることを示す。先ず、候補分子とPRRの細胞内局在を、間接蛍光抗体法を用いた二重染色によって観察し、両者が共局在することを確認する。次に、両者が実際に結合していることを、免疫共沈法によって確認する。 細胞内でPRRと候補タンパク質の結合が確認できた後は、PRR結合タンパク質とPRRの機能発現(トランスロケーション、リガンド結合能、シグナル伝達)との関係、PRR結合タンパク質とPRRの結合部位、PRR結合タンパク質によるPRR機能の制御機構を明らかにする。
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