2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580113
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長谷川 守文 茨城大学, 農学部, 准教授 (80311588)
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Keywords | フィトアレキシン / イネ / テルペノイド / 天然物化学 / 生物有機化学 |
Research Abstract |
これまでの研究で,イネフィトアレキシンの未知の生合成中間や代謝産物,または未知のフィトアレキシンの探索を行い,紫外線照射イネ葉中から分手量300と推定される化合物(PA-300)を見いだしていたが,その構造は明らかになっていなかった.本年度の研究では,PA-300の構造解析を目的として,紫外線照射イネ葉片400gから,各種クロマトグラフィーによってPA-300を2.1mg単離した.PA-300の分子式は高分解能質量分析によって,C_<20>H_<28>O_2と推定された.各種NMRスペクトルを用いて,その平面構造を推定したところ,イネが生合成するジテルペン化合物として既に知られているものとは異なるcasbane骨格を有していた.その構造をもとに文献を精査したところ,軟質サンゴSinularia depressaの産生するテルペノイド10-hydroxydepressinの酸化物として既に報告されている10-oxodepressin(1)とPA-300の^1Hおよび^<13>C NMRスペクトルが一致した.さらに,旋光度を測定した結果,PA-300の比旋光度の符号は化合物1のものとは異なり,PA-300は化合物1のエナンチオマーであるent-10-oxodepressinであることが明らかとなった.Casbane骨格を有するジテルペン化合物の報告は天然では比較的稀であり,トウダイグサ科の植物およびSinularia属の軟質サンゴからの報告例しか知られていない.イネは構造的に多様なフィトアレキシンを生産することが知られているが,今まで報告されているジテルペン系フィトアレキシンはすべてent-またはsyn-コパリル二リン酸を経由して生合成される三環性ジテルペンであり,ent-10-oxodepressinは新たなイネの二次代謝産物として非常に興味深いものである.
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