2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580113
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
長谷川 守文 茨城大学, 農学部, 准教授 (80311588)
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Keywords | フィトアレキシン / イネ / テルペノイド / いもち病 / 天然物化学 / 生物有機化学 |
Research Abstract |
22年度の研究で紫外線照射イネ葉中から発見した新規ストレス誘導性化合物であるent-10-oxodepressin (1)について,イネいもち病菌胞子発芽阻害活性を調べた結果,化合物1は胞子発芽阻害活性を示し,IC_50は31 ppmであった.いもち病菌を接種したイネ葉中の化合物1の蓄積量を測定したところ,化合物1はいもち病菌接種後96から120時間で約6μg/gF.W.の蓄積量を示した.この蓄積量はモミラクトンAやサクラネチンと比較すると少なかったが,オリザレキシンAおよびCと同程度であった.また,フィトアレキシンの蕃積を誘導することが知られているエリシターである塩化銅(II)およびジャスモン酸によっても化合物1の蓄積が誘導されることを確認した.以上の結果から,化合物1はイネの16番目の新規フィトアレキシンであることが明らかとなった.化合物1はイネの既知フィトアレキシンとは基本炭素骨格が異なっており,この結果はイネの二次代謝産物生合成および病害抵抗性機構の研究において大変興味深い発見である. モミラクトンBのイネいもち病菌による代謝についての研究を行った結果,すでに知られているモミラクトンAと同様に変換されて,3β,20-epoxy-3α-hydroxy-6-oxo-19-nor-9β-pimara-7,15-dieneへと代謝されることを明らかにした.また,モミラクトンAの代謝産物である3,6-dioxo-19-nor9β-pimara-7,15-dieneがいもち病菌によってさらにどのような化合物に変換されるかについても検討したところ,分子量が304と推定される代謝産物を確認した.この化合物についてはまだ単離に至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規のイネフィトアレキシンを発見したことは大きな研究成果であり,いもち病菌によるフィトアレキシンの代謝についても一定の進展があった.しかし,サクラネチンのいもち病菌による代謝については当初の計画通りには進まなかったため,総合的には(2)の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
紫外線照射イネ葉中の新たなストレス誘導性化合物とフィトアレキシンのいもち病菌による代謝産物のどちらについても,すでにLC/MSのピークとしては有力な候補物質を見つけているため,これらの単離・構造解析を目指す.
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