2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規薬剤の開発を指向した天然生理活性物質の合成と構造研究
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22580115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石神 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70292787)
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Keywords | 抗ピロリ菌 / セスキテルペン / ラジカル環化反応 / Topsentolide / 抗腫瘍活性 / 立体化学 / 有機合成 |
Research Abstract |
薬剤耐性ピロリ菌に対し抗菌活性を有するセスキテルペン類、癌細胞に対して細胞毒性を示すTopsentolide類、抗真菌活性を有するMajusculoic acidに関して、立体化学の決定を目的として合成研究を行った。 1.抗ピロリ菌活性を有するサンタロール型セスキテルペン類に関しては、タンデム型ラジカル環化反応を用いたビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格の効率的構築法の確立を目指した。昨年度までに骨格構築とラセミ体合成には成功しているが、鍵環化反応の収率や選択性が低かったため、種々の環化前駆体を用いてタンデム型ラジカル環化反応の最適化を図った。その結果、側鎖の立体配座を11員環ラクトンとして固定した前駆体を用いることにより、タンデム環化の収率を大幅に改善することに成功し、効率的な骨格構築法の開発と天然物ラセミ体の効率的合成を達成することができた。 2.腫瘍細胞に対して顕著な細胞毒性を示すTopsentolide類に関しては、可能な4種の立体異性体すべてを合成し(昨年度までに2種は合成済み)、相対および絶対立体配置の決定を完了した。天然型及び非天然型のTopsentolide Aを用いて腫瘍細胞に対する細胞毒性を評価し、構造活性相関の一端を解明することに成功した。 3.抗真菌剤として期待されるMajusculoic acidの合成に関しては、昨年度までに、Simmons-Smith反応を用いたキラルビルディングブロック新規構築法を確立している。本化合物の両端に側鎖を伸長し、目的のMajusculoic acidメチルエステルの合成まで完了した。側鎖上の二重結合の立体選択性など課題の残る工程を改善するとともに、最終物への変換と天然物の絶対立体配置の決定を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つ掲げた合成研究のうちTopsentolide類に関しては合成・構造決定・活性評価の全てを完了し、Majusculoic acidに関しては光学活性体合成まで数工程の検討が必要なだけとなっている。抗ピロリサンタロール類縁体に関しては、ラセミ体による効率的合成法を確立できたので、今後光学活性体合成に適用すれば、最終目的である天然物の立体化学決定を達成できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
抗ピロリ菌活性を有するサンタロール型セスキテルペン類に関しては、今回開発した効率的タンデム型ラジカル環化反応によるラセミ体合成を、光学活性体に応用し、目的物の立体選択的合成と天然物の絶対立体配置の決定を行う。 Majusculoic acidに関しては、課題として残された側鎖の立体選択性の改善に焦点を当て、早期の光学活性体合成と天然物の絶対立体配置の決定を目指す。 両化合物共に、合成完了後には活性試験による評価も視野に入れる。
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