2011 Fiscal Year Annual Research Report
食品イソチオシアネート類による抗糖尿病効果の作用機序の解析
Project/Area Number |
22580125
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 芳明 岩手大学, 農学部, 准教授 (50312517)
|
Keywords | 糖尿病 / 脂肪細胞 / イソチオシアネート / アディポサイトカイン / わさび / インスリン |
Research Abstract |
本年度は、前年の検討で本わさびに含有するイソチオシアネート化合物である6-methylsulfinylhexylisothiocyanate(6MSITC)で認められた脂肪細胞に対する分化および脂肪蓄積効果が、他のイソチオシアネート化合物でも見出されるのか、またそれらのイソチオシアネート化合物の効果が糖尿病や肥満時に見られる酸化ストレスやサイトカインストレスなどを軽減する機能があるかを検討した。その結果、(1)本わさびと同じアブラナ科植物であるクレソンに含まれるフェネチルイソチオシアネート(PEITC)に6MSITCと同様にマウス3T3-L1脂肪細胞の分化抑制と脂肪蓄積抑制作用があることが明らかとなった。また、アディポサイトカインの一つで、糖代謝の制御に関わるアディポネクチンの発現を検討したところ、PEITCの処理により上昇が認められた。(2)酸化ストレスはアディポネクチン発現を抑制することが知られている。他方、イソチオシアネート化合物には生体の抗酸化機能を惹起する作用があることから、酸化ストレス負荷時のアディポネクチン発現低下に対するPEITCの効果を検討したところ、酸化ストレスとして過酸化水素添加時のアディポネクチン発現低下をPEITCは抑制することを見出した。一方、サイトカインストレス負荷としてTNFα処理をした場合には、PEITCの効果は顕著ではないが、TNFαによる影響を抑制する傾向を示した。(3)次にin vivoにおけるPEITCの有効性を検討するために糖尿病モデル動物KK-Ayマウスを用いて、病態への効果を検討したところ、血糖上昇を抑制する傾向を示し、HbA1c値については有意に抑制した。また、肝臓における糖新生系酵素の遺伝子発現を抑制する効果も認めた。以上の結果は6MSITC同様、PEITCも糖尿病態を緩和する可能性を示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はアブラナ科食材などに含まれているイソチオシアネート化合物(ITC類)の健康機能性の作用機序の解析を目的としている。中心課題として挙げていたもののうち、わさびITC以外の新たなITC類での有効性について、クレソン等に含まれるITCを見出した。また、作用機序の解析としての抗酸化系活性の関与については、機能抑制試験は十分でないが、遺伝子発現レベルの確認は応答している結果が取れており、概ね順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、イソチオシアネート化合物の1つでクレソンなどの食品含まれるフェネチルイソチオシアネート(PEITC)に脂肪細胞での分化抑制、脂肪蓄積抑制効果、糖尿病モデル動物における糖尿病態の緩和効果があることが見出されたことから、6MSITCの機能性の機序に加え、PEITCの効果も検討に加えて実施していく。次の2つの解析を中心に試みる方針である。1つは、イソチオシアネートで処理された脂肪細胞におけるインスリン作用への影響については未解明であることから、イソチオシアネート処理によるインスリン応答に対する影響を明らかにする。2つ目は、病態モデル動物での効果に糖新生系酵素の発現抑制が認められていることから肝臓における作用機序をシグナル分子の挙動から検討していく。
|