2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管病発症の分子メカニズム解明と、革新的天然成分による予防的治療法の開発
Project/Area Number |
22580131
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
加治屋 勝子 山口大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (00379942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 博子 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40359899)
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Keywords | 血管病 / 膜ラフト / モデル膜 / リポソーム |
Research Abstract |
脳梗塞や心筋梗塞などの血管病は、我が国死因の上位を占めており、解決すべき最重要課題である。通常、血管は、細胞質Ca^<2+>依存性に収縮し、血圧や血流を一定に保っている(正常収縮)が、血管病の本態である血管の異常収縮は、Rhoキナーゼを介したCa2+非依存性の収縮によって引き起こされる。申請者らは、この血管異常収縮の原因分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を世界で初めて同定し、病的シグナル伝達にコレステロールおよび膜ラフトが必要である事を世界で初めて発見した。しかしながら、細胞内における膜ラフトの機能や構造は不明瞭な点が多く、特に、血管機能における報告は皆無である。そこで、本研究では、ラフトモデル膜を応用して、血管異常収縮を引き起こす分子メカニズムを解明し、分子間相互作用を定量的・経時的に評価することを目的としている。さらに、血管異常収縮そのものを予防するため、SPCによる異常収縮のみを選択的に抑制できる天然成分の生体レベル検証を行うことも目的としている。 1.モデル膜の電子顕微鏡観察を行ったところ、ラフトでない膜(リン脂質のみで構成)は表面形状が凸凹であるが、コレステロールやスフィンゴ脂質を含むラフト膜では、表面形状がなだらかになっていることを明らかにした。また、これらのモデル膜にSPCを添加すると、膜全体が隆起したが、他のスフィンゴ脂質の添加では見られなかった。 2.天然成分の生体レベルでの検証を進めるため、野生型マウスを用いて、脳血管攣縮を誘発させる技術を確立した。 3.脳血管攣縮モデルマウスに与える天然成分の評価のため、抽出条件の異なる分画を用いて張力測定を行った。すなわち、血管の正常収縮を抑制することなく、SPCによる異常収縮のみを選択的に抑制できることを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、血管病発症の分子メカニズム解明と、天然成分による予防的治療法の開発、という2つの目標を挙げており、いずれにおいても、研究代表者(加治屋)と研究分担者(岸)が協力し合い、研究計画に沿って研究を遂行できている。具体的には、1)電子顕微鏡による膜ラフトの視覚化については、観察条件の検討およびモデル膜での観察を行い、新たな知見を得る事ができた。2)天然成分の生体レベル検証に向け、脳血管攣縮モデルマウスの作成に成功した。以上より、本研究は、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞表面の電子顕微鏡観察では、培地中の塩が画像取得の妨げとなる。そのため、培地中の塩を除去する必要があるが、除去操作による細胞表面の変形は好ましくない。現在、細胞全体を被膜する新しい手法を取り入れ、鮮明な膜表面像の取得準備を進めている。
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Research Products
(2 results)