2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体試料分析を主目的としたアシル化アントシアニンの高感度LC-MS/MS分析
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22580147
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松藤 寛 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (70287605)
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Keywords | アントシアニン / 安定性 / LC-MS分析 |
Research Abstract |
結合糖数の多いアントシアニン(AN)をギ酸系を移動相としたHPLCで分析すると、移動相溶媒の影響を受け、分解・減少することが判明している。このことは、これまでLC-MSやLC-MS/MSを用いて報告されているANの分析、特に微量分析を行っている細胞内や血中内での分析・同定に関する論文については見直す必要があることを示唆する。そこで、LC-MS/MSを用い、これらANの高感度分析法の確立を目的とした。 結合糖数の異なるシアニジンCy系ANを入手し(結合糖数0;Cy、結合糖数1;Cy-3-Glc、結合糖数2;Cy-3-Rut,Cy-3-Sof、Cy-3-Glc-5-Glc、結合糖数3;Cy-3-Glc-(Glc)-Rhm、Cy-3-Sof-5-Glcおよび、桂皮酸類が結合したCy3S5G-Caf,Cy3S5G-Fer,Cy3S5G-pCou)、ギ酸系およびTFA系を用いてLC-MS/MS分析を行ったところ、結合糖数1までのANは移動相0,1%ギ酸-アセトニトリルで約1~10pmolまで定量可能であった。しかし、結合糖数2以上になると、約100pmolまで検出できるが、ピークはブロード化及び分裂し、混合物で分析すると定量できなかった。一方、移動相0.5%TFA-アセトニトリルを用いると、ピーク形状はシャープとなり、すべてのANを分離できたが、MSでの検出は定量限界値500~1000pmolと低感度であった(UV検出での値約10pmol)。そこで、カラム分離後に0.5%ギ酸を混合するポストカラム法を種々の流量比で試みたが、定量限界値は100~200pmol程度までしか感度向上せず、UV検出の方が高感度であった。次いで、10nmol/mlとなるように調製した溶液及び細胞培養用培地中からの添加回収試験をカートリッジを用いて行ったところ(LC-MS/MSには100pmol負荷)、コントロール溶液(0.5%TFA溶液)からは85~110%程度の良好な回収率であったが、無血清培地では20~40%、血清含有培地では10%程度しか、回収されなかった。本試験では、培地中での安定性は考慮していないため、培地中からの回収率は不明であるが、分解物の濃度はかなり低いと容易に推察され、更なる高感度化が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
得られる結果は予想範囲内であり、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
結果は想定範囲内であるが、高感度化を図ると分離が低下し、分離向上すると低感度化するというジレンマがある。打開策案もあるが、極めて高価であり、かつ共通機器であるLC-MS/MS装置の汚染につながる可能性があることから、メーカーにも問い合わせながら、慎重に対応し、研究を進めていく。高感度分析法が確立できれば、これまでのアントシアニンの矛盾や機構解明等さらなる展開が期待できることから、ネガティブデータも含め、より高感度な分析法を確立し、生体試料中での「真の」アントシアニン含量と機能発現との関わりを明らかにする。
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Research Products
(6 results)