2011 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素誘導因子の発現を亢進する調節因子の機能解析と機能阻害評価系の構築
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22580152
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Research Institution | Osaka Women's Junior College |
Principal Investigator |
中野 長久 大阪女子短期大学, 生活科学科, 教授 (20081581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00244666)
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Keywords | 低酸素 / 低酸素誘導因子-2α / 低酸素誘導因子-1α / KLHL20 / 転写因子 |
Research Abstract |
がんは生活習慣に起因する疾病であり、なかでも前立腺がんや乳がんの発症率が近年上昇しているのは食の欧米化がその一因であると考えられている。前立腺がんや乳がんのような固形がんが生育する環境は低酸素である。そのような過酷な環境に適応するためにがん細胞は低酸素応答遺伝子を発現する。低酸素応答遺伝子の発現を主に制御するのが、低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor,HIF)であり、2つのサブユニット(αサブユニットとβサブユニット)から構成される。常時安定に発現しているβサブユニットに対して、αサブユニット(HIF-1αまたはHIF-2α)は酸素存在下では分解されるが低酸素下では安定に発現するので、HIF発現の律速因子はαサブユニットである。αサブユニット間の構造類似性は高いが、HIF-1とHIF-2によって発現する遺伝子は異なり、またそれぞれのαサブユニットが時空間的に異なる発現パターンを示すことから、互いの機能は重複していないと考えられている。HIF-1αの発現調節機構に関する多くの報告があるのに対して、HIF-2αに関する報告はほとんどない。本研究では、HIF-2α特異的な発現調節機構を明らかにするために、HIF-2αと相互作用するタンパク質を酵母ツーハイブリッドシステムで探索し、kelch-like 20(KLHL20)を候補タンパク質として得た。KLHL20はHIF-2αと結合したが、HIF-1αとは結合しなかった。siRNAでKLHL20をノックダウンしたところ、HIF-2αタンパク質レベルは減少したが、HIF-2αmRNAレベルもHIF-1αタンパク質レベルも変動しなかった。またKLHL20のノックダウンは低酸素が誘導したHIF活性を抑制し、その結果、VEGFやCITED2のようなHIF-2α応答遺伝子のレベルを抑制した。一方、KLHL20を発現させたとき、酸素感受性のHIF-2αだけでなく、酸素非感受性のHIF-2αの発現レベルと転写活性レベルが増加した。KLHL20 siRNAはvon Hippel-Lindau tumor suppressor protein(pVHL)欠損786-O細胞のHIF-2活性を阻害した。これらの結果から、KLHL20は低酸素とpVHL非依存性の機構を通してHIF-2αタンパク質発現を調節する新規因子であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の仮説通りに実験は進行している。これは、これまでの研究成果が学術雑誌(Biochem. Biophys. Res. Commun.)に論文として投稿して、既に受理されていることからも、本研究の達成度が順調であることを裏付けている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、KLHL20が低酸素とpVHL非依存性の機構を通してHIF-2αタンパク質発現を調節する新規因子であることが判明したことから、今後、低酸素応答測定系を構築するために、HIF-2αとKLHL20との関係をさらに明らかにしつつ、HIF-2αの酸素存在下での役割についても検討する。現段階で研究計画内容に変更点も問題点もない。
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Research Products
(4 results)