2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580153
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
久保 和弘 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40360705)
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Keywords | アシンメトリー / リン脂質 / 酸化 / コレステロール |
Research Abstract |
生体膜(リン脂質二重層)の内外層を構成する脂質分子は大きく異なる。しかし、in vitro及びin vivoにおける膜の酸化に関するこれまでの多くの研究は、膜リン脂質の(アシンメトリー)非対称分布の影響について考慮していない。申請者は先に、ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルエタノールアミン(PE)の非対称分布が膜の酸化安定性に関与することを明らかにした。本研究の目的は、PEの非対称分布を中心に、コレステロール(Cho)の膜安定化効果等に対するPEの共存効果について、さらに、生体におけるChoの抗酸化作用の有無について検討を行うことを目的とした。 エクストルーダーを用いて、脂肪酸組成の異なるホスファチジルコリン(PC16:0、PC18:0、PC18:1)と牛脳由来ホスファチジルエタノールアミン(PE)からなるリホソーム、さらに、これらにChoを含むリホソームを作成した。 PC/PE/Choの比率はヒト赤血球に準じた。粒子径がおよそ200nm以下において、PC18:1は、PC18:0、PC16:0に比べて、脂肪酸側鎖の占有容積が大きいために、リホソーム膜の内層に分布しやすいと考えられる。すなわち、PEはPC18:1と共存すると外層へ押し出される(外層PEの割合が増加する)。しかし、本研究では、脂肪酸側鎖の占有容積が低いPC16:0とChoが共存する場合、PEが外層により多く配向することが観察された(PC16:0/PE/Cho>PC18:0/PE/Cho)。これらのリホソームのリン脂質二重層の外層側から、水溶性ラジカル発生剤を用いて酸化させ、生成する過酸化物を測定したところ、対照(Choを含まない)と+Cho(Choを含む)のいずれも、経時的に有意に増加した。同じPC種で比較すると、酸化時間が経過するほど、+Choにおいて有意に抑制された。対照は、4時間後にPC18:0/PEがPC16:0/PEとPC18:1/PEに比べ、増加した。+Choも、4時間後にPC18:0/PE>PC16:0/PE>PC18:1/PEの順に有意に増加した。以上のことから、Choは膜において抗酸化作用を発揮するが、その作用は、膜におけるリン脂質分布のみならず、リン脂質分子中の脂肪酸組成の影響を受けることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
結果を論文にまとめるには至っていない。また、予定していた生体を用いた試験についてマウスを用いて検討中であり、得られたデータについて再現性を得られるには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に準じて実施する。
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