2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来木本植物ニワウルシの分布の現状と遺伝マーカーを用いた分布拡大に関する研究
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22580157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 陽子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (00302597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (90213024)
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Keywords | ニワウルシ / 葉緑体DNAシーケンス / 核SSRマーカー / 葉緑体ハプロタイプ / 全国レベル / 林分レベル |
Research Abstract |
今年度は、葉緑体DNAと核DNAの種内における多型性を利用し、全国レベルと林分レベルにおけるニワウルシの遺伝解析を行った。主な成果は、以下の通りである。 全国レベルの葉緑体DNA解析(母系解析):日本全国64地点および中国4地点からニワウルシをサンプリングした。サンプリングした計449個体を対象に、約2400塩基対の葉緑体DNA配列をシーケンシングにより決定し、本種の日本における母系分布の特徴を検討した。その結果、(1)遺伝的に大きく異なる2タイプの母系に由来するニワウルシが全国に分布していること、(2)2タイプの母系の分布はそれぞれ北海道地方から九州地方にまで及ぶこと、(3)2タイプの母系は一部で混生していること、が日本におけるニワウルシの葉緑体ハプロタイプ分布の特徴として分かった。 全国レベルの遺伝的多様性および遺伝構造の解析:北海道から香川県にかけて、ニワウルシの植栽集団5集団と野生化集団4集団からサンプリングを行った。サンプリングした254個体を対象に、核SSRマーカー(アメリカのグループにより既開発)と葉緑体DNAマーカー(本研究で新たに開発)を用いて、集団の遺伝的特徴を把握した。その結果、(1)植栽集団と野生化集団の遺伝的多様性に関する指標は同程度であること、(2)集団間の遺伝的分化は進行しているが全国レベルで遺伝的分化は進行していないこと、(3)集団内で親子兄弟関係があること、が遺伝的特徴として分かった。 林分レベルの遺伝解析:甲府盆地内の9カ所の地点からニワウルシをサンプリングした。サンプリングした個体について、葉緑体DNAマーカーを用いて解析を行った。その結果、土地利用とは関係なく、甲府盆上地西側にのみ2つのハプロタイプの混生地が存在することが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国レベルのニワウルシ採取が終わり、その遺伝解析もおおむね終了している。 また、林分レベルの遺伝解析についてはDNA抽出まで終わっている。後は、遺伝解析と分布調査の関係について検討する状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年である。林分レベルにおけるニワウルシの分布拡大のプロセスについて、核SSRマーカーを用いた多型解析と空中写真を用いた景観生態学的解析を併用することで検討する。さらに、植物社会学的手法を用いて、ニワウルシが在来植生へ与える影響を検討する。 そして、全国レベルと林分レベルで得られた各々の知見を合わせて、ニワウルシの外来種としての問題点を抽出し、今後の管理手法の提言を目指す。
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Research Products
(2 results)