2011 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化が標高傾度にそった亜高山帯針葉樹林の更新動態と分布に及ぼす影響
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22580160
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高橋 耕一 信州大学, 理学部, 准教授 (80324226)
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Keywords | 温暖化 / オオシラビソ / ハイマツ / 高木限界 / 植生分布 / 森林限界 / 撹乱 / ダケカンバ |
Research Abstract |
標高傾度にそって気温が変化するため,それに応じて植生も変化する.また植生は徐々に変化するのではなく,あるところで急激に変化する.これを植生移行帯という.この研究では本州中部地方の亜高山帯針葉樹林の下部で優占するシラビソと上部で優占するオオシラビソの植生移行帯と森林限界(オオシラビソの分布上限)がどのようなメカニズムで形成されるのか,そして地球温暖化は植生移行帯や森林限界の動態と標高傾度にそった植生パターンにどのように影響するのかを解明することを目的としている.標高は温度を通して実生の発芽定着とその後の個体間競争に影響し,また高い標高では風速が強いために攪乱が増加するだろう.それらの結果をとおして標高傾度にそった更新動態や植生分布が決定されると考えられる. オオシラビソとシラビソの標高傾度にそった更新動態を明らかにするために,平成16~18年に設定された3箇所のプロットにおいて再測定を行った.これらのプロットは,分布下限のシラビソ林(標高1600m),シラビソ・オオシラビソ林(2000m),オオシラビソ林(2400m)である.その結果,1600mでは,オオシラビソよりも成長の速いシラビソが撹乱後に優占し,そして2400mでは,成長は遅くとも低温耐性のあるオオシラビソが優占できることが示唆された. また,標高傾度にそった森林の物質生産についても調べた.その結果,高い標高ほど森林の現存量は減少したが,純生産量の減少率は現存量に比べて小さかった.そのため,高い標高の森林でも効率良く物質生産を行なっていることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,(1)標高傾度にそった森林の物質生産,(2)実生の成長実験のための種子の採取,(3)植生移行帯を形成する分布上限と下限の種の個体群維持機構について明らかにすることを目的としていた.(1),(3)は継続して調査,解析する必要はあるが,順調である.(2)は種子が生産されなかったため,採取することができなかった.そのため,次年度に持ち越しとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も継続して,(1)標高傾度にそった森林の物質生産,(2)実生の成長実験のための種子の採取,(3)植生移行帯を形成する分布上限と下限の種の個体群維持機構について明らかにすることを目的として,調査研究を行う.(1)では,積み上げ法による純生産量の推定は概ね終了しているため,平成24年度は炭素循環の重要な要素である土壌呼吸の測定をおもに行う.(3)も3標高でのデータは平成23年度にとったため,平成24年度は統計解析を中心に行う.
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Research Products
(6 results)