2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
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Keywords | 段階的斜面崩壊 / 台湾高雄県小林村斜面崩壊 / 降雨浸透解析 / 斜面安定解析 / 紀伊半島豪雨災害 / 水理特性 / 二次被害 / 地震計記録 |
Research Abstract |
複数回に分けて発生する段階的崩壊のモデル化の改良を進めた。具体的には、一旦Fs=1.0となった後も、崩壊した土塊を取り除いた新たな斜面形状に計算対象領域を更新して解析を継続するアルゴリズムの作成を行った。ここで、計算対象領域が逐次変化していく場合、降雨浸透解析と斜面安定解析を独立に実施する手順では、変化する斜面形状を降雨浸透解析に反映できないため、両解析アルゴリズムを結合して、同時刻の現象を同時に解くように変更した。この際、崩壊土塊を取り除くことで新たに生成した地表面のプラスの水圧が大気解放される場合もあり、そのような土層圧力水頭の境界条件の変化を考慮したモデルとした。このモデルで、台湾高雄県小林村で発生した大規模斜面崩壊を対象に浸透・斜面安定解析を実施したところ、第1段階の部分的な崩壊発生の後に、複数回の崩壊が続いて発生することが確認された。そこで、台湾国立高雄第一科技大学のLu,Chih-Wei准教授とともに、台湾小林村崩壊における段階的崩壊の痕跡についての現地調査を実施した。結果的には、明確な痕跡は見られず、モデルの検証はできなかった。モデルの検証は未だ不十分ではあるが、これまでは単一の崩壊としか表現できなかった現象を、規模や現象の継続時間の再現性を高めて、より正確に計算することが可能となった。これを用いて、より適切な崩壊規模の予測や、斜面崩壊による2次的な土砂災害の防止につながる情報提供が可能となると考えられる。 本研究では、さらに2011年9月に紀伊半島で多発した土砂災害現場を調査し、斜面崩壊跡地において段階的崩壊現象の有無に関して跡地の状況や、目撃証言をもとに、段階的崩壊の抽出を実施した。今後、地震計のデータ等を利用した、より詳しい検証が必要であるが、横断方向の段階的崩壊と思われる跡地はいくつか見られたが、縦断方向の段階的崩壊は確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水路を用いた人工斜面における実験が未実施のため、モデルの検証を行っていないため
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Strategy for Future Research Activity |
台湾小林村の崩壊に関する既往の研究によると地震計のデータから小林村崩壊の全体の継続時間は95秒間であったことが示されており、崩壊が段階的に起こっていたとしても、各段階間の時間はほんの数秒程度であることになり、そのような現象をモデルでシミュレートすることも課題として残っている。また、シミュレーションにおいて、条件によっては、各段階の崩壊の規模が小さく、非常に多くの段階に分かれて崩壊が発生する場合もあり、実際にそのような現象が起きうるかということの検証も必要である。このような観点から、モデルの修正・検証が今後の重要な課題である。
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