2010 Fiscal Year Annual Research Report
素材生産における環境配慮を進めるための事業体論及び業界論の構築
Project/Area Number |
22580165
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
藤掛 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90243071)
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Keywords | 林業 / 素材生産 / 環境保全 / 業界活動 / 認証制度 |
Research Abstract |
2000年代中頃よりわが国の木材生産量は増加傾向にあり、本格的な林業再生が期待されている。しかし、その中で素材生産の現場では車両系機械が普及し、伐採跡地の林地荒廃が問題化した。わが国では素材生産時の環境保全について十分な法規制が存在しない。そこで本年度の研究では、宮崎県において素材生産時の環境配慮に業界活動として取り組んでいるNPO法人ひむか維森の会とこれに参加する素材生産事業体を対象に聞き取り調査等を行うとともに、業界活動に関する研究レビューを行い、営利活動である木材生産と環境配慮の両立についての業界活動の可能性と課題について分析した。ひむか維森の会は、2007年より環境配慮を進めるためのガイドラインの策定と普及に取り組み、2011年にはガイドラインに基づき素材生産事業体を認証する認証制度を発足させた。この間の活動を分析した結果、第一に、この一連の活動が業界の自主的活動として行われたことが大きな意味を持つことが明らかとなった。このことによって業界主導でルール作りを進めるなど業界が主導権を握ることが可能となり、それが業界内外の理解を得た求心力のある活動につながっていた。第二に、業界活動の課題として、業界全体での活動と個々の事業体との間に生じる認識、利害関係上のギャップをどのように埋めていくかが重要であること、またそれゆえ業界活動における集団浅慮的な意思決定がこのギャップを生じさせる危険性があることを明らかにした。第三に、もう一つの課題としてボランタリーな活動の限界が挙げられるとともに、ひむか維森の会は認証制度の導入によって、この限界を乗り越えようとしていることを明らかにした。
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