2011 Fiscal Year Annual Research Report
窒素安定同位体比を用いた窒素飽和現象発生機構の解明
Project/Area Number |
22580167
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (00353590)
|
Keywords | スギ / ヒノキ / 窒素飽和 / 安定同位体 / 硝酸態窒素 / アンモニア態窒素 / 森林土壌 / 下層植生 |
Research Abstract |
近年、都市近郊の森林では、生態系外から過剰な窒素が負荷されることにより生態系の健全性が低下する窒素飽和現象が認められる。窒素飽和状態の森林では、土壌における硝化活性が高まる。植物が吸収するのは主にアンモニア態と硝酸態の窒素であるが、これらは異なる窒素安定同位体比を示すことが知られている。したがって、樹木の葉と土壌中の窒素の同位体比を比較することによって、樹木が吸収する硝酸態窒素とアンモニア態窒素の割合を評価することができる。本年度は高知県の土壌窒素資源量の異なる2つのヒノキ林において、間伐がヒノキと下層植生の窒素利用様式に及ぼす影響を6年間にわたって明らかにした。窒素資源の多い天狗試験地の無間伐林分では、葉の窒素安定同位体比がヒノキで下層植生よりも低かった。間伐を実施するとヒノキ葉の窒素同位体比が増加し、下層植生と同じ程度になった。一方、窒素資源の少ない旧宮試験地では、無間伐林分ではヒノキと下層植生の窒素同位体比に差は認められなかった。間伐を実施すると、下層植生の窒素安定同位体比が増加したが、ヒノキでは変化しなかった。以上の結果より、間伐による窒素資源量の増加に対する反応はヒノキと下層植生で異なり、窒素資源の少ない条件ではヒノキが利用する窒素の形態は変化しにくいことが示唆された。したがって、ヒノキ林において下層植生を維持することは、間伐後の生態系からの窒素流亡を抑制する上で重要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに試料採取、分析をすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地調査を行い、化学分析をする。得られた成果を取りまとめて学会発表する。
|
Research Products
(5 results)