2012 Fiscal Year Annual Research Report
窒素安定同位体比を用いた窒素飽和現象発生機構の解明
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22580167
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
稲垣 善之 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (00353590)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 窒素飽和 / 硝酸態窒素 / ヒノキ / 窒素安定同位体比 |
Research Abstract |
近年、都市近郊の森林では、降水などによって生態系外から人為起源による過剰な窒素が負荷されることにより生態系の健全性が低下する窒素飽和現象が認められる。窒素飽和状態の森林では、土壌における硝化活性が高まる。植物が吸収するのは主にアンモニア態と硝酸態の窒素であるが、これらは異なる窒素安定同位体比を示すことが知られている。したがって、樹木の葉と土壌中の窒素の同位体比を比較することによって、樹木の硝酸態窒素吸収特性を評価することができる。本研究では、窒素負荷の異なるヒノキ林を対象として、樹木が吸収する窒素の形態を明らかにすることを目的とした。窒素飽和状態の多摩試験地では、ヒノキ葉の窒素安定同位体比は低い値を示し、土壌の硝酸態窒素の値に近いため、ヒノキは主に土壌の硝酸態窒素を吸収すると考えられた。一方、全国14地点のヒノキ林において葉の窒素安定同位体比は、堆積有機物量が多い林分で低い傾向が認められた。したがって、ヒノキ葉の窒素安定同位体比は、土壌中の硝酸を選択的に吸収する場合と堆積有機物層に窒素源を依存する場合に低い値を示すことが明らかになった。堆積有機物層の蓄積量の大きい林分では、土壌の硝化活性は低く硝酸態窒素の吸収は極めて少ないと考えられる。したがって、葉の窒素安定同位体比に影響を及ぼすメカニズムの違いは堆積有機物層の存在量から判断することができる。堆積有機物層の少ない林分においては、葉の窒素安定同位体比は、窒素飽和状態における硝酸態窒素の吸収能力を判断するのに適した指標であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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