2012 Fiscal Year Annual Research Report
短伐期施業で経営される里山林の生物多様性・炭素収支の定量的評価
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22580173
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松本 和馬 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, 産学官連携推進調整監 (00353863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 幸弘 独立行政法人森林総合研究所, 企画部, 研究企画科長 (90353771)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 里山 / 昆虫 / 二酸化炭素排出削減 / 生態学 / 林学 / 生物多様性 |
Research Abstract |
林齢に伴うチョウ類群集の遷移を明らかにするため、トランセクト法による見取り調査を継続した。林齢が3年以下ではツマグロキチョウ、キタテハ、ウラギンヒョウモン等の草原性種および森林性種でも林縁や若齢林の明るい環境を好むクモガタヒョウモン、ミドリヒョウモン等が多く、林齢の進行とともにこれらが減少した。5~10年生の林ではオオヒカゲ、ヒカゲチョウ、サトキマダラヒカゲ等の高木の多い林の内部に見られる森林性種が多くなった。収穫伐期に近い20年生前後の林ではこれらに加えてオオムラサキが比較的良く見られた。短伐期のコナラ・クヌギ林では更新から伐期齢までの短い期間に生息種が入れ替わるが、このような林齢の異なる林分は小面積で隣接し、いわゆる異質なパッチ状環境の相互的散在の状態になっているため、地域の多様性が高くなっているものと考えられた。 萌芽更新による短伐期広葉樹林の成長ならびに炭素収支モデルを考案した。更新個体の直径成長をロジスチック式で表現し、パラメータが持つ個体差によって、徐々に個体数を減少(自己間引き)させることによって、現実の施業パターンを表現した。本モデルによって推定されるバイオマス(葉、枝、幹、根の現存量)および幹材積の成長経過について、他地域で収集されている調査データと比較・検討し、おおむね実際の短伐期広葉樹林の成長を再現できることを確認した。本研究の調査林分における立地条件等を反映させるべく、成長データを収集・分析中であるが、これらデータをもとに本モデルを改良し、短伐期広葉樹林施業の炭素固定量を集約する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した林齢別の生物多様性データ、炭素収支のパラメータが得られている。今後、林齢に伴う昆虫相の遷移の解析や炭素収支のモデル構築を行う予定であるが予定通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
林齢と群集構成種の生息場所選好性との関 係に注目して、短伐期施業林の林齢の変化に伴う昆虫類群集の遷移をとりまとめる。また、同じコナラ林の炭素 収支モデル構築に必要なパラメータを確保し、生育段階ごとの樹高成長を推定し、バイオマス(炭素)成長モデル を構成して、短伐期施業で維持されるコナラ林の炭素収支についてとりまとめる。これらのとりまとめにより、短伐期で経営される里山林が生物多様性の保全および炭素収支においてどのような昨日を果たしているかを明らかにする。
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Research Products
(2 results)