2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580183
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 助教 (60273489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 助教 (10293911)
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Keywords | 木質化 / 樹木細胞 / リグニン / 顕微ラマン分光 / MALDI-TOF MS / コニフェリン / シリンジン / ヒノキ |
Research Abstract |
スギ、ヒノキ、アカマツ、イチョウの直立木から活発に木化が進行している時期に分化中木部を採取し、直ちにスライディングミクロトームを用いて厚さ20μmの横断面切片を作製し、室温で乾燥させた。特別に深さ120μmとなるように座ぐり加工を施したMALDI-TOF MS測定用のターゲットプレートに、導電性のC両面テープ(厚さ約110μm)を用いて切片を固定した。その後、カチオン化剤としてトリフルオロ酢酸を含むマトリクス(DHB)溶液を噴霧し、真空乾燥させた。その切片についてMALDI-TOF MSを用いてマッピング測定を行った。その結果、コニフェリンと同様にm/z=365のピークを示す物質が、二次壁形成中木部に局在することが明らかになった。さらにMALDI-TOF MS測定時にアルゴンガスを導入し、m/z=365にピークを示す物質のフラグメントイオンのパターンを標品のコニフェリンと比較した。その結果、分化中木部からの物質と、標品のコニフェリンの両方からコニフェリルアルコール及びグルコースに由来する2つのピークが見られた。しかしながら、標品として分化中木部に存在する可能性のあるスクロースのMALDI-TOF MSスペクトル及びフラグメントイオンのパターンを調べたところ、これらがコニフェリンと一致することが明らかになった。この結果は、MALDI-TOF MSイメージング測定のみではコニフェリンとスクロースを識別することが困難なことを示している。スクロースとコニフェリンのラマンスペクトルを測定した結果、両者のスペクトルは明確に異なることが明らかになった。このことより、MALDI-TOF MSイメージングにより、切片中の大まかな分布を調べた後に、連続切片を顕微ラマン分光法によって高分解能で測定することが、切片中におけるコニフェリンの分布を調べるのに有効な方法であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MALDI-TOF MSイメージングは空間分解能はやや低いものの、切片中の物質の分布を高感度で測定できる利点がある。一方、顕微ラマン分光法は空間分解能が高く、物質の化学構造に関する情報量に優れている。本年度の研究により、これらの2つの方法を組み合わせることで、分化中木部におけるリグニン前駆物質の分布を明らかにできる目処が得られた点で、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
マトリクスの種類、フラグメントイオンの測定条件等を検討することにより、イメージングにおいてコニフェリンとスクロースの識別ができないかどうかについて検討する。また、横断切片上で放射組織上にコニフェリンもしくはスクロースの分布が観察されたため、横断面切片に加えて、連続板目切片をMALDI-TOF MSイメージング及び顕微ラマン分光測定に供することで、放射柔細胞中でのコニフェリンの有無を確認する予定である。また、針葉樹に加えて、広葉樹を用いてコニフェリン及びシリンジンの分布を調べる予定である。
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Research Products
(1 results)