2011 Fiscal Year Annual Research Report
発光ダイオード単波長照射によるトラフグの性転換誘導
Project/Area Number |
22580200
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 明彦 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教 (10332842)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 倫也 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (00183955)
|
Keywords | エストロゲン / ラジアルグリア細胞 / 色覚 / アロマターゼ / アンドロゲン / 精子 / 性分化 / 環境要因 |
Research Abstract |
I色覚が魚類の性、成長にどのような影響を及ぼすのかはほとんど解明されていない。そこでトラフグを実験魚に用い、艀化直後の稚魚から幼魚にかけての色覚と性分化および成長・行動について解析を行った。発光ダイオード(LED)光源を用い、昨年度の赤色光(625nm)に加え、青色光(465nm)・14時間明期(0.2kLux)の条件下で飼育を行い性比・体長分布・行動について調査した。昨年度同様、赤色光で飼育したトラフグは自然光に比べ、照射後1週間で成長にばらつきが確認された。赤色光個体は他個体や水槽壁を「つつく」行動が激しく、残存率は自然光・赤色光に比べ5分の1以下であった。生存個体は、自然光よりも有意に体長が大きく、照射直後から餌食いが良い成長の早い個体と考えられた。一方、青色光照射個体は残存率・成長に関しては自然光と変わらなかった。また、「つつく」行動は確認できず遊泳はゆったりとしていた。3ヶ月飼育後、自然光に戻した青色個体群は、遊泳・餌食の能力が乏しく、死滅した。このことは、赤色光は稚魚期に必要であり成長に必要な重要な環境要因と考えられた。また、青色光を用いることにより、トラフグにみられる共食い行動を抑制することも可能であるど考える。性分化に関しては、赤色・青色光共に生殖腺の発達は正常であり、ゲノム情報から得られた遺伝的性と生殖腺の表現型が不一致となる性転換は見られなかった。 II脳内でさまざまな作用を行うエストロゲン(E2)の合成を制御する脳型アロマターゼの発現、局在、活性機構について解析を進めている。トラフグにおいては終脳、視床下部下葉の放射状グリア細胞に分布が見られ、その分布は密な網目状であり、E2による脳の領域化を示唆する。一方、精子にも脳型アロマターゼは発現しており、成熟期において血中E2濃度が上昇することから、E2産生への寄与が示された。今後は、トラフグ脳・精巣で発現するアロマターゼを酵素学的に分析した後、成熟過程での活性動態を調査する方針である
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は4月から10月まで飼育実験に半年以上の時間がとられ解析が遅れたため、23年度は学会発表がなく論文作成が遅れてはいるが、色覚と成長・行動において再現性の高い結果がでたのは良かった。アロマターゼの機能と色覚行動に関連があるのか現時点では不明であるが、これから解析を進めていき、24年度の学会で報告し論文発表を行う計画である。
|
Strategy for Future Research Activity |
トラフグは雄が重宝される魚種なので、色波長のような安全な方法により性転換が誘導されることが理想ではあったが、本実験によりその可能性は否定され、遺伝的な性の強固な魚種であることが再認識された。しかし生育や行動において発見があり、色覚が脳内のホルモンや神経回路に大きな影響を与え行動成長を制御していることがわかった。特に赤色で誘導される「つつく」行動を制御することにより成長の早い稚魚飼育法や共食いの防止につながることが期待できる。赤色光で誘導される神経ホルモンの分子回路を明らかし、行動や成長をコントロールできる方法を見つけだしたい。今後は、赤色で発現制御を受ける脳内遺伝子や蛋白質を同定していこうと考えている。
|