2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22580201
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松下 吉樹 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (30372072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
サトイト シリルグレンベレズ 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (40363478)
山下 由起子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 産学官連携研究員 (30569190)
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Keywords | 水産学 / 漁業 / 生態系保全 |
Research Abstract |
着底漁業が海底環境に与える影響を評価するために,海底と一体となって海底環境を構成する刺胞動物(いわゆるサンゴ類など)や海綿動物などの固着性生物に注目した。今年度は長崎県の底曳網漁業,底延縄漁業,底刺網漁業において操業状況と固着性生物の混獲のモニタリングを実施した。 2011年7-11月の間に底曳網漁船2隻と底延縄漁船2隻にGPSロガーとGPS内蔵デジタルカメラを装備し,その間の操業位置と混獲された固着性生物の記録を行った。また,甲板上に長時間記録可能なデジタルビデオカメラを設置して,混獲生物の監視実験も実施した。 いずれの漁業においても花虫綱の生物の混獲が認められ,これらに加えて底びき網漁業ではウミエラ目の生物の混獲が顕著であった。操業データから特定した底びき網が集中的に操業し,かつ固着性生物の混獲が比較的多い海域の海底をサイドスキャンソナーにより調べたところ,この海域の底質は泥から砂地で構成され,各所に天然礁と人工魚礁が点在していることが明らかになった。また,海底には底びき網が通過した跡が確認された。 延縄漁業と底刺網漁業が天然礁が多い海域で操業されることから,花虫綱の生物は海底の天然礁と人工魚礁に生育し,ウミエラ目の生物は平坦な海底にも生育しており,これらの海底を漁具が掃過することで混獲が生じると考えられた。3つの漁業の1日あたりの掃過面積は,底びき網漁業で0.24-0.48km^2,底延縄漁業で0.70km^2,底刺網漁業で0.06km^2と見積もられ,底延縄漁業が最大となった。次年度は掃過面積に加えて,漁具の構成(重さや構造)と対象とする水域の特徴(岩礁域,平坦域など)を統合した評価方法を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固着性生物全般の分類や生活史についての専門家が少なく知見が限られていることより,種レベルでの同定や混獲による短・長期的な影響を検討することが困難であるが,モニタリング手法の開発は順調に進んでおり,最終年度には評価方法を提案できる見通しであることより,順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた資料について,地理情報システムを用いて解析し,固着性生物の混獲の位置・数量情報による地理的分布と,直接観察によるこれらの分布状況の相違点を明らかにする。そしてこの相違点と漁業技術分析の結果を統合して解析・検討することで,着底漁業が固着性生物を混獲する過程,機構を明示し,着底漁業が固着性生物を混獲する効率を推定する。これらの解析・検討により,着底漁業活動の固着性生物への影響を評価する。ただし,底びき網漁業以外の着底漁業については資料が少ないため,今後の資料の蓄積をはかる。
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Research Products
(3 results)