2010 Fiscal Year Annual Research Report
シャットネラ赤潮から急激な貧酸素化をもたらす海洋微生物群集の実態解明
Project/Area Number |
22580202
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
和田 実 長崎大学, 大学院・生産科学研究科, 准教授 (70292860)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩滝 光儀 山形大学, 理学部, 准教授 (50423645)
梅澤 有 長崎大学, 水産学部, 助教 (50442538)
鈴木 利一 長崎大学, 水産学部, 教授 (20284713)
|
Keywords | シャットネラ / 赤潮 / 細菌群集 / 酸素消費 / 溶存有機物 |
Research Abstract |
有明海の小長井漁港および近隣のアサリ漁場における海洋観測を行い、得られた海水試料について、シャットネラ細胞数、全細菌数、溶存有機炭素濃度を測定したところ、水温と全菌数、および溶存有機炭素量と全菌数の間でそれぞれ高い相関が見られたが、シャットネラ細胞数と細菌数や溶存有機炭素濃度には正の相関は認められなかった。そこで、培養実験では、シャットネラマリナおよびシャットネラアンティカから放出される溶存有機物量を定量し、シャットネラ細胞の周囲に存在する細菌群集の現存量および群集組成の動態をより直接的に明らかにすることを目指した。 その結果、シャットネラマリナおよびシャットネラアンティカ株の各培養において、対数増殖初期と定常期初期の2つの時期に溶存有機炭素量の顕著な増加が見られた。培地中の全細菌数は溶存有機炭素量の増加と同時期に増え、各シャットネラ株の培養初期と培養後期に顕著な増加が見られた。 シャットネラ株の培養期間を通じてγ-プロテオバクテリアが細菌群集の主要グループだったが、培養中期にはα-プロテオバクテリアの割合が増加する傾向が見られた。 これらの実験結果から、天然においてもシャットネラ赤潮の発生によって、その初期と後期に大量の溶存有機物が海水中に供給される可能性が示唆された。放出された有機物は、シャットネラ細胞周辺に存在する主にγおよびαプロテオバクテリアによって消費されると考えられ、これらの細菌がシャットネラ赤潮の崩壊前から高い酸素消費を行っている可能性が示唆された。 以上の知見は、諌早湾でシャットネラ赤潮に伴って起こる貧酸素水塊の発生メカニズムを考察する上で重要であるとともに、赤潮発生予知や終息予測に応用できると期待される。
|