Research Abstract |
沖縄島東岸に位置する中城湾の波打ち際(砂浜海岸と泥干潟)で,投網と小型曳網による採集を行った.その結果,リュウキュウドロクイ仔稚魚は,体長8.9mmになると砂泥底の波打ち際に周年出現した.砂浜海岸から泥底干潟へ移動し始める15mmには,背鰭,腹鰭と臀鰭の各鰭条が定数に達し,脊椎骨や尾骨の多くが硬骨化した.すなわち本種の仔稚魚は,まず砂浜海岸に接岸し,遊泳機能の鍵に伴い能動的に泥干潟へ磯すると考えられた.その後,泥干潟で成長を側,20mmから体高が著しく増加し始め,背鰭や臀鰭の基部および肛門は定位置に達した.また,25mmには,本属魚類の特徴である背鰭最後軟条の伸長,鯉蓋後方の黒色斑の形成が認められ,この時期までに腹部の稜鱗が定数に達した.このように,本種の仔稚魚は,波打ち際に接岸以降,浅海域に生活の場を強く依存していることが明らかとなった.沖縄島では,本土復帰後,陸と海の境である波打ち際の開発が急速に進み,本土の約2倍の速さで自然海岸が消滅している.特に,砂浜海岸や泥干潟の波打ち際は,容易に埋め立てできるため開発の対象とされてきた.本種の生活史上,これら両環境は不可欠であり,本種の持続的利用や保護のため,浅海域を一体的に保全していくことが急務である. 波打ち際に接岸する以前のドロクイ類仔魚の分布を明らかにするため,2010年12月~2011年3月に毎月1回(原則として大潮時の午前8時から午後1時),中城湾泡瀬海域に設定した3定点で採集を行った、採集には2種類の丸稚ネットを用い,船速1.5~3.2ノット(平均2.2ノット),可能な限り10分間(平均9.3分間)曳網した.採集時には,各定点で水温,塩分,電気伝導度,溶存酸素を計測した.採集された仔稚魚は,直ちに5%海水ホルマリンで固定して研究室に持ち帰り,その日のうちに70%アルコールに移して保存した.現在,選別や種査定等解析を進めている
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