2011 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ礁池における魚類の生産性と大規模な人為的環境撹乱の影響
Project/Area Number |
22580206
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
立原 一憲 琉球大学, 理学部, 准教授 (70264471)
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Keywords | サンゴ礁池 / 中城湾 / ドロクイ類 / ヒメジ類 / 年齢と成長 / 成熟期 / 埋め立て / 自然交雑 |
Research Abstract |
ドロクイ類:沖縄島周辺海域でドロクイ類2種の交雑個体を採集し、年齢と成長、成熟および出現率を解析した。交雑個体は2歳で150-210㎜に達し、寿命は雌雄ともに5歳であった。生殖腺の観察から交雑種も成熟することが明らかとなり、最小成熟個体は雌173.2㎜、雄192.6㎜であった。自然交雑個体は羽地内海を除くすべての海域で出現し、埋め立てなどの開発に伴う沿岸域の改変が進んでいるところほど高率で出現することが明らかとなった。ドロクイ類の仔稚魚の生息場所を明らかにするため、中城湾の沖合3定点で丸稚ネットを曳網し、従来知られていた仔魚より小型の体長約4㎜の個体を採集した。今回の結果と従来の知見を合わせて考えると、ドロクイ類は、孵化後短期間を沖合中層で過ごし、10日以内に波打ち際に移動するものと推定された。本属魚類の再生産には、仔稚魚の揺籃の場となる波打ち際が極めて重要であることが推察された。 ヒメジ類:沖縄近海に3属30種生息しているヒメジ類のうち、特に水産上重要な6種(ホウライヒメジ・コバンヒメジ・オジサン・アカヒメジ・モンツキアカヒメジ・ヨメヒメジ)を湾全体が大きなサンゴ礁地であると考えられる中城湾に位置する市場で購入もしくは採集し、生殖腺指数と生殖腺の組織学的観察から、各種の産卵期を推定した。いずれの種も春から夏に産卵期を迎えることが明らかとなった。また、これら6種を耳石をダイヤモンドカッターを用いて切断、薄層切片を作成し、各々の年齢を査定した。その結果、いずれの種も最高齢は6歳前後であり、寿命に雌雄差がないことが明らかとなった。その反面、成熟様式は、小型・若齢で成熟に至る種と大型・高齢にならないと成熟しない種に分けられた。すなわち、同科魚類でありながら、その繁殖戦略には差が認められ、種毎に漁業や人為的環境改変が与える影響が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中城湾における水産重要種を選び、その再生産機構に関する解析を行った。その結果、埋立ての進行がドロクイ類の再生産に影響を与える可能性が示唆され、埋立ての進行した場所ではリュウキュウドロクイとドロクイの間で交雑が生じる可能性が明らかとなった。また、ヒメジ類は成長に伴い、深い場所に移動する種と一生浅い所にいる種に分かれることが明らかとなり、同じ漁法であっても両者の成魚に対する漁獲圧が大きく異なることだ示唆された。これらの知見は、いずれも印刷もしくは口頭発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、研究計画の最終年度に当たるため、ドロクイ類、ヒメジ類に加え、水産上の重要種であるフエダイ類のデータを収集し、それらの再生産機構の特徴とそれに与える人為的な環境撹乱の影響を考察していきたい。さらに、ドロクイ類の2種の産卵場を確定し、なぜ交雑が生じるのかを明らかにしたい。さらにドロクイ類の各成長段階における生息場所を明らかにし、どのような環境が生育に必要であるのかを解明する予定である。
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