2011 Fiscal Year Annual Research Report
乾燥により塩漬魚肉内部に形成される食塩の濃度勾配の動的解析とその機能特性への影響
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22580227
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
大泉 徹 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (20254245)
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Keywords | 食品 / 水産物 / 貯蔵加工 / 食塩 / 乾燥 |
Research Abstract |
前年度までの研究の結果から、魚肉中への食塩の浸透は魚肉の乾燥速度を増大させることが示されたが、魚肉中の食塩含量と乾燥速度の関係は未だ明らかではない。そこで、食塩含量の異なる塩漬魚肉の乾燥速度を未塩漬魚肉のそれと比較検討した。その結果、魚肉の乾燥速度は、0.3mol/kg以上の食塩の浸透で増大することが確かめられた。この傾向は魚肉の厚さが増加するほど顕著となること、また塩漬魚肉の乾燥中には魚肉の内部から表層部への水分移動が促進されることから、食塩の浸透による魚肉の乾燥速度の増大は、魚肉内部の水分移動の促進を通じて、引き起こされることが示唆された。一方、塩漬乾燥魚肉の表層部と中心部の食塩含量を測定した結果、乾燥中の魚肉表層部から中心部への食塩の移動はきわめて緩やかに起こることが示された。このことは、エネルギー分散型X線分光器を装備した走査電子顕微鏡を用いて、乾燥中の塩漬魚肉内部の食塩の移動を連続的に解析した結果からも裏づけられた。食塩の浸透は筋原繊維タンパク質の溶解を通じて魚肉の保水力を増大させることが知られている。乾燥中の魚肉内部における食塩の拡散速度はきわめて小さいことから、塩漬魚肉中で形成された食塩の濃度勾配(表層部>中心部)は乾燥中も維持され、保水力の大きい表層部への水分移動が促進されることが推察された。食塩が浸透しても保水力が増大しない加熱魚肉では、食塩の乾燥促進効果が全く認められないことからも上記の推定が支持された。以上の結果は、塩漬魚肉内部に形成される食塩の濃度勾配が魚肉の乾燥の進行に強く影響を及ぼすことを示すものであり、水産加工の技術原理を解明し、その応用を図るうえできわめて重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塩漬魚肉の乾燥速度に及ぼす食塩含量の影響および塩漬魚肉内部の食塩の濃度勾配の乾燥にともなう変化についてはほぼ計画を達成している。このうちエネルギー分散型X線分光器を装備した走査電子顕微鏡による塩漬乾燥魚肉中の食塩の濃度勾配の解析に関しても研究方法がほぼ確立し、概ね予測されたとおりの結果が得られているが、定量的な取り扱いができるように、さらに研究を推進することが必要である。乾燥の進行と魚肉中の食塩の分散状態の関連から明らかにしようとした内容については、加熱魚肉の乾燥速度に及ぼす食塩の影響を検討することを通じて期待された成果が得られている。これらのことから、「研究の目的」の達成度について、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギー分散型X線分光器を装備した走査電子顕微鏡による塩漬乾燥魚肉中の食塩の濃度勾配の定量的解析について、さらに研究を進展させる。また、塩漬乾燥魚肉内部に形成される食塩の濃度勾配と筋原繊維タンパク質の変性および保水力の変化との関連について検討を行い、前年度までの研究結果を裏づけることが必要である。さらに塩漬乾燥魚肉内部に形成される食塩の濃度勾配と魚肉の物性および水分活性との関連についても検討するが、すでに予備的な成果が得られている。以上のように、研究を遂行するうえでの大きな問題点は見られない。 一方、成果の公表に関しては、23年度に学会発表した内容を24年度には論文としてとりまとめることに力を注ぐことが必要である。
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Research Products
(2 results)