2011 Fiscal Year Annual Research Report
アルデヒドの可視化技術を利用した水産物の品質評価法の開発
Project/Area Number |
22580229
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Research Institution | National Fisheries University |
Principal Investigator |
田中 竜介 独立行政法人水産大学校, 食品科学科, 准教授 (30399654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 映夫 独立行政法人水産大学校, 教授 (50399648)
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Keywords | 4-hydroxy-2-hexenal / アルデヒド / 脂質酸化 / 酸化ストレス / アミノ酸 |
Research Abstract |
本年度は、生存中の脂質酸化が製品の品質に影響をおよぼすことに着目し、生魚の脂質酸化によって生じるアルデヒドについて以下の検討を行った。 1.人為的に酸化ストレスを与えたコイのアルデヒドの増加 コイに四塩化炭素を腹腔内に注射することにより人為的にストレスを与えた。四塩化炭素の投与によって、肝臓の脂質含量の増加、過酸化物価の上昇、我々がストレス指標として使用している脂質酸化物由来のヒドロキシ脂質の増加がそれぞれ確認された。この結果は、既報と同様な結果を示した。そして、今回着目しているアルデヒドの一つであるn-3系不飽和脂肪酸より生じる4-hydroxy-2-hexenal(HHE)も有意に増加したことから、新たな指標となり得ることが示唆された。また、同時に分析可能な他のアルデヒドについて検討したところストレスによるHHEの増加はプロパナールとの相関性が高かった。 2.養殖現場にて発生する病魚のアルデヒドの増加 養殖現場で発生した病魚をサンプリングし、人為的酸化ストレスモデルと同様にアルデヒドの分析を行い、病気の種類、魚種との関連性について検討した。今回分析した魚種ならびに病気の種類は、トラフグ(ピセリオ、トリコディナの寄生虫に感染)、ヒラメ(連鎖球菌に感染)、ブリ(黄疽菌に感染)、カンパチ(類結節症原因菌に感染)について分析を行った。この結果、魚種ならびに病気の種類に関係なく、四塩化炭素の投与と同様に病気魚の肝臓中のHHEならびにプロパナールが増加したことから、これらの指標はストレスに反映することが示唆された。 3,アルデヒドの生成による他の成分への影響 アルデヒドの生成は、臭いなどの品質劣化を引き起こすだけではなく、他の生体内構成成分にも影響をおよぼす。そこで、その影響について考察する必要があるため、上記1.2の実験について、アルデヒド以外の他の成分を検討した結果、タンパク加水分解由来のアミノ酸の減少が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水産食品の品質劣化ならびに生魚の健康状態について4-hydroxy-2-hexena1(HHE)を指標として分析を行ったところ、それぞれの評価が可能となり、これに関する論文ならびに著書を公表したため。
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Strategy for Future Research Activity |
水産加工品の中でも脂質酸化の影響を受けやすい乾物(干物)に着目しHHEを利用した品質評価を行う。なお、干物には、魚種、乾燥方法、乾燥時間、調味液の有無などが考えられるが、魚種を限定し、乾燥時間と調味液の有無について検討を行う。また、調味液の有無については、HHEの存在によって調味液中のエキス成分(アミノ酸等)との反応にともない、色、匂い、味など品質に直接影響を与えている。従って、HHEの分析に限定せず、エキス成分に含まれるアミノ酸、核酸関連物質、有機酸などの成分も同時に測定し、前述の褐変反応の指標である赤色色素の測定を行い、色、匂い、味などの官能評価によって総合的に品質評価を行う。
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Research Products
(3 results)